食で健康
2017.05.26

美肌効果だけじゃない 「甘酒」でエネルギーチャージ!

免疫力を高めて暑い季節を乗り切る
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(C) Reika

日本で古くから受け継がれてきた「甘酒」。冬に体を温めるという効果はご存じの方も多いと思いますが、栄養豊富なことから「飲む点滴」ともいわれ、江戸時代には夏バテ予防に夏の風物詩として親しまれていました。そんな甘酒の健康効果について、基礎知識や健康に役立てる上手な飲み方を、芝大門いまづクリニック院長の今津嘉宏さんにお聞きしました。

「飲む点滴」といわれる理由
甘酒は発酵食品

甘酒の製造法には、もち米を こうじ で発酵させるものと、酒かすを使って発酵させるものの2種類があります。現在では、甘酒は清涼飲料水に分類され、子どもから妊婦まで誰でも気軽に飲める万能飲料として、さまざまな製品があります。

製造法からも分かるように、甘酒は発酵食品の一つです。日本人は伝統的に、納豆、味噌、漬物といった発酵食品をうまく食材として取り入れており、こうした発酵技術のおかげで海外とは違う独自の食文化が根付いてきました。

また、発酵には保存だけでなく健康面での利点もあります。必須アミノ酸や必須脂肪酸といった、人間が生きていくために欠かすことができない栄養素の中には体内ではつくれないものもあり、そうした栄養素は食べ物から取り入れる必要があります。食べ物を発酵させることで、うま味(アミノ酸など)やこうした栄養素を増やすことができます。さらに、発酵食品には腸内の環境を整えるという働きも期待できます。こうしたことからも、甘酒は「飲む点滴」と言われるゆえんです。

つくり方で違う
甘酒の味わいと成分

米麹でつくる甘酒は、もち米に含まれているでんぷん質を酵母菌によって発酵させて、栄養素を含ませます。米の栄養素に加えて、酵母菌の作用によりでんぷんが糖化され、甘い飲み物になります。アミノ酸などのうま味成分や微量のミネラルなどの成分もプラスされます。米の食物繊維は変わらず含まれ、酒かすでつくる甘酒よりも酵母は多くなります。

(C) shiroken

一方、酒かすでつくる甘酒は、日本酒を搾った後の“カス”が材料なので、糖質やアミノ酸の栄養素は少なめで、逆に食物繊維は多いのが特徴です。発酵させても糖分はあまり出ませんから、酒かすからつくった甘酒は後から砂糖を加えるのが一般的です。また、アルコール分は10%強残るといわれています。煮沸するとアルコールは飛んでしまうので子どもでも飲めるといわれていますが、それでも微量のアルコール分は残ります。

(C) クリエーター112

このように見てみると、甘酒の種類による違いは、食物繊維の豊富さ、アルコール分、あるいは実際に生きている酵母の量などの違いといえそうです。また、米麹でつくる甘酒は、日本酒と同様に、酵母の種類によって、味や香りのバラエティーが広がります。

甘酒はなぜ健康にいいの?
(1)バランスの取れた栄養源

いずれの種類でも、甘酒には糖質、脂質、アミノ酸、ミネラルなどが含まれ、バランスの取れた栄養源となります。ただし、甘酒のカロリーは100ml当たり200kcal以上あります。昔と違って高カロリーな食品が多い現代では、飲み過ぎればカロリー過多になる可能性もあるため、取り方には注意したいもの。

体調不良で食欲がないとき、あるいは忙しくて朝食を取る時間がないときなどに、甘酒を活用されるのも良いでしょう。

甘酒はなぜ健康にいいの?
(2)腸内環境を整える

甘酒から取り入れた酵母菌は腸内の環境を整えるのにも役立ちます。近年、大腸に多くすみ着いている腸内細菌の研究が進むことによって、腸内細菌の状態が体調を左右するということが分かってきました。腸内環境に直接作用する方法の一つとして、発酵食品が注目され始めたのです。腸内の環境が良くなれば、代謝や免疫力のアップにもつながります。

米麹でつくる甘酒のほうが酵母菌の量は多いですが、酒かすでつくる甘酒は食物繊維が豊富です。どちらのタイプの甘酒でも、腸内環境の改善に効果が期待できます。自分にとって相性のいいものを選べば良いでしょう。

健康になるための甘酒の飲み方とは?

① 取り過ぎに気をつけて1日にコップ1〜2杯

飲む量は1日に100〜200mlがいいようです。飲み過ぎるとカロリー過多になるので気をつけましょう。

② 酵母の作用を期待するなら60度以下で

60度以上になると酵母が死んでしまうので、温めたいときは沸騰させないくらいに加熱すると生きたまま酵母を取ることができます。常温、または冷やして飲むことをお薦めします。

③ 飲むタイミングはライフスタイルに合わせて

バランスのいい手軽な栄養源となること、胃の働きが悪いときでもおなかに優しい食材として利用することができるので、朝、食欲がないときや忙しい人のエネルギーチャージとして役立ちます。

また、食事のバランスが偏りがちなビジネスパーソンの補食としてもお薦めです。昼食や夕食を外食やコンビニの弁当で済ませたりすることが増えると、どうしても食物繊維や発酵食品が不足しがち。そのときにヨーグルトや味噌汁を追加するのと同じような感覚で、飲み物に甘酒を選ぶのも良い方法です。

消化が良いので、夜は寝る前に甘酒を温めて飲めば、疲れた体にエネルギーを補給して疲れを取ることができますし、体も温まり、睡眠の質を良くすることも期待できます。特にストレスの多い受験生や激務をこなすビジネスパーソン、夏バテで食欲がなくなっているような人には、お薦めの飲み方です。清酒酵母(日本酒製造に使われ、酒かすにも含まれる)を取ると、アデノシンA2A受容体という脳内物質を活性化させ、睡眠の質を改善するという研究報告もあります。

④ 体調を見て自分に合うものを探す

腸内環境は個人によって違うため、甘酒も材料となる酵母菌によって相性があります。自分に合うものを見つけるには、最低1週間程度続けて飲んで、体調の変化を見てみます。

どちらの製造法が優れているとか、どの成分が良いということではなく、甘酒も発酵食品の一つと広く捉えることを心掛けましょう。最近では、家庭で甘酒がつくれるキットも市販されており、名酒の酒かすを使ったり、好みの酵母菌を選んだりして、さまざまな味や香りを楽しむこともできます。

ライフスタイルに合わせて甘酒を上手に取り入れ、疲れ知らずの体で、暑い季節を乗り越えましょう。

今津 嘉宏 芝大門いまづクリニック院長

慶應義塾大学医学部漢方医学センター助教、北里大学薬学部非常勤講師などを経て2013年に「芝大門いまづクリニック」を開業。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。

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