食で健康
2017.11.24

宴会シーズン到来!二日酔い対策に有効なのは?

~肝機能を高める食品に注目!~
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いよいよ忘年会・新年会シーズンが近づいてきました。お酒を飲む機会がぐんと増える時期だからこそ心がけたいのが、二日酔いにならない飲み方。お酒の量をコントロールするのはもちろんのこと、「お酒とともに何を食べるか」がとても大切です。二日酔い予防に効果的な食べ物の知識から、二日酔いになった時の対処法まで、慶應義塾大学医学部教授の鈴木秀和さんにお聞きしました。

どれだけ飲んだら限界なのか
自分の適量を把握すること

ビールやワイン、日本酒、焼酎、ウイスキー……。どんなお酒でも、アルコールを摂取すると、肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。アセトアルデヒドは有害物質であるため、さらに酢酸へと分解され、最終的に水と二酸化炭素になって体外へと排出されます。

二日酔いは、自分の肝臓のアルコール分解能力を超える量のお酒を飲んだ結果として起こるものです。

分解しきれなかったアセトアルデヒドが体内に残ることで、頭痛や吐き気、胸のむかつき、喉の渇き、体のほてりといった症状が表れます。また、肝臓で分解しきれなかったアルコールがそのまま体内に残っている場合は、ふらつきやろれつが回らないといった 酩酊 めいてい 状態が翌日まで残る場合もあります。

このような二日酔いを防ぐためには「アルコールを分解しやすい状態に体内を保つ」ことがとても重要です。具体的には、

1.たくさんの量を飲み過ぎない
2.アルコール濃度の高いお酒ばかり飲み続けない
(濃度が高いほどアルコールの分解に負担がかかる)

この2つが基本です。

日本人には先天的にアセトアルデヒドを分解する酵素が少ない人や欠けている人が多くいます。少量でもお酒を飲むとすぐに顔が真っ赤になったり、具合が悪くなったりするなど、アルコールを摂取できない体質の人は少なくありません。
特に、「以前は少量のアルコールでも顔が赤くなっていたけれど、最近はたくさん飲んでも慣れてきたのか、赤くならなくなった。だから今は毎日大量に飲んでいる」というような人は注意が必要です。先天的にアルコールを分解する酵素の働きが弱く、アセトアルデヒドが体内に蓄積しやすい傾向にあるためです。

肝臓のアルコール分解能力は人によってさまざまです。人から勧められるままに飲んだり、たくさん飲む人のペースに合わせて飲んだりしていると、自分の肝臓のアルコール分解能力を超えてしまうかもしれません。大切なのは、自分がどのくらいの量を飲むと体の状態がどうなるのか、どのような飲み方なら楽しく飲めるのかを把握しておくことです。自分にとっての適量を自分のペースで飲むように心がけましょう。

そしてもう一つ、ぜひ心がけたいのが、肝機能を高め、アルコールの分解を助ける食品などを、お酒を飲む前や飲んでいる時に摂ることです。特にお薦めの食品や効果的な摂り方について、次にご紹介しましょう。

肝機能を高める
「タウリン」を含む食品

肝機能力を高め、アルコールの分解を助ける食品の代表が、カキやハマグリ、アサリ、シジミ、タコ、イカなどの魚介類です。また、マグロやサバなどの血合い(※)も挙げられます。
いずれも、「タウリン」を豊富に含んでいるのが大きな特徴です。タウリンは、肝臓で胆汁酸の分泌を促す働きや、アルコールを分解して体外への排出を促す解毒作用をもっています。
タウリンの効果は熱や調理法によって変化はしませんが、水に溶け出しやすい性質があるので、煮物や汁物にした場合は汁なども一緒に摂ることがポイントです。
これからの季節はお酒とともに魚介類たっぷりの鍋料理などを楽しむ機会も増えると思いますが、その場合もだし汁まで味わい尽くしましょう。タウリンを十分に摂取することができて二日酔い予防に効果的です。水分を摂ることで、脱水を防ぐ働きも期待できます。
また、飲酒前にタウリンを含む栄養ドリンク剤などを摂るのも一考です。

もう一つ、飲酒前に摂るとよいと言われ、サプリメントなどに用いられている食品に「ウコン」があります。ウコンに多く含まれる成分「クルクミン」には、胆汁の分泌を活発にし、肝臓の働きをサポートする作用があります。アルコール分解能力を高め、アセトアルデヒドの分解を促進します。

ただし、ウコンを一度に大量摂取すると逆に肝障害を起こすことがあるので、その点は注意をしてください。適量の目安は1日5~10g程度です。

ウコンとはカレー粉に含まれる黄色い「ターメリック」のことです。例えばお酒を飲む予定がある日のランチは、カレーライスにしてウコンを摂取するのも、二日酔い予防の一つの方法として試してみてもよいでしょう。

さらに、以下の食品もおつまみとして積極的に摂るとよいでしょう。

※血合い:魚の肉で、全体の色と異なり濃い暗赤色を示す部分。特に、背骨の周囲に多い。

■ おくら、長芋、なめこ、納豆などのネバネバ食材

胃や腸の粘膜 を保護するネバネバ成分(※)を多く含みます。飲酒前に摂ることでアルコールの急激な吸収を抑え、胃粘膜障害を防ぎます。

※ネバネバ成分はムチンと呼ばれることもありますが、本来、ムチンは動物の粘液に含まれる糖たんぱく質をもつ成分のことをいいます。食物のネバネバ成分は、ムコ多糖たんぱく質と糖たんぱく質の混合物で、動物の粘液に含まれるムチンとは成分が異なります。

■ 枝豆、じゃがいも

ビタミンCを豊富に含み、肝臓でのフリーラジカル(活性酸素 ※)の生成を抑えます。
※フリーラジカル(活性酸素):ウイルスや細菌から細胞を守る働きがあります。しかし過剰産生されてしまうと、正常な細胞にダメージを与え、肝機能が低下して毒素や有害物質の分解が効率よくできなくなります。

■ 梅干し

肝臓の働きを助けるピクリン酸や解毒作用をもつクエン酸を含みます。飲んでいる時はもちろん、二日酔いの時にもお薦めです。

■ ゴマ

強い抗酸化力を持つセサミノールを含み、肝機能を強化します。

■ チーズなどの乳製品

乳製品に含まれるたんぱく質に肝機能を活性化させる働きがあります。

二日酔い解消に有効な
水分補給の方法とは?

気をつけて飲んでいたつもりだけれど、翌朝、二日酔いになってしまった。食欲も全然わかない……。このような時に無理に食事を摂る必要はありませんが、水分補給だけはしっかり行ってください。肝臓でアルコールが分解される際に多くの水分が消費されるので、たくさんお酒を飲んだ後は体が脱水症状を起こしている可能性があるためです。

ただし、水分だけを補給しても尿として排せつされてしまうので、水分を体に保持するためにも適量の塩分と一緒に摂ることも大切です。また、肝臓の働きを活性化し、アルコール分解を助ける糖分も同時に補給しましょう。お薦めはスポーツドリンクや果汁100%のジュースです。なかでも果糖やビタミンCを含むグレープフルーツ果汁100%のジュースや、アルコールの分解に効果的な成分であるアラニンやグルタミンなどを含むトマトジュースは、アルコール分解を促進する作用に優れています。

二日酔いによる頭痛には、カフェインを含むコーヒーやお茶が効果的です。ズキズキした頭の痛みは血管が拡張することで起こるため、血管を収縮させる働きをもつカフェインを摂取することで痛みが次第に和らぎます。
また、スプーン1杯のはちみつも二日酔いによる頭痛の緩和に効果があると言われています。

さらに、先に挙げたタウリンを含む魚介類を具にした味噌汁もお薦めです。とりわけ味噌汁の具として取り入れやすいシジミは二日酔いの回復を早めるのに効果的です。シジミだけでタウリンを十分量摂取するのは難しいですが、シジミには、タウリン以外にビタミンB12や鉄なども豊富に含み、肝機能障害や貧血の予防などへの効果が期待できます。

なお、二日酔いによる吐き気やむかつきには、胃腸機能を調整する塩化カルニチンなどが配合された胃腸薬も有効な場合があります。

大量のお酒を飲んだ後の
入浴は控えましょう

忘年会や新年会シーズンは宴会が続くことも増えるかもしれませんが、原則としてたくさんお酒を飲んだ次の日の飲酒は控えるようにしましょう。
連日連夜続けて大量の飲酒をすることで胃腸や肝臓に負担がかかるのはもちろん、肝臓で分解しきれないアセトアルデヒドがさらに体内に蓄積されていくことになります。

アルコールの過剰摂取で起こる代表的な病気に「アルコール性脂肪肝」があります。これは肝臓がアルコールの分解に追われて脂肪の分解が後回しになり、肝細胞に脂肪が蓄積することで起こります。そのまま大量の飲酒を続けると、アセトアルデヒドや活性酸素によって肝細胞が破壊され、「アルコール性肝炎」や「肝硬変」など重度の病気に進行していきます。

なお、具合が悪くなるほど酔っていなくても、脱水症状を起こしている飲酒後に入浴するのは控えたほうがよいです。飲酒後に運動したり、サウナに入ったりするのを好む人もいますが、これも体によくありません。筋肉に血流が集まることで肝臓への血流が減り、アルコール分解が低下するためです。
飲み方や食べ物以外で二日酔いを防ぐには、お酒を飲んでいる最中や、飲んで帰宅するまでの間に使い捨てカイロをおなかに当てて肝臓を温めるのも効果的です。また、帰宅後は横になって安静にし、十分に睡眠をとりましょう。肝臓の血流が良くなり、アルコールの代謝が促進されます。
二日酔いについては厳密な研究データはないため、「これで絶対大丈夫」という対策はありませんが、自分の適量を知り、自分のペースで楽しむことが大切です。

鈴木 秀和 慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター教授

1989年慶應義塾大学医学部卒業。93年大学院医学研究科博士課程修了。カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員、北里研究所病院消化器科医長、慶應義塾大学医学部内科学(消化器)専任講師、准教授などを経て、2015年より現職、17年より専修医研修センター長。食道・胃・十二指腸・膵胆道疾患、ヘリコバクターピロリ感染症、胃食道逆流症、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群、慢性便秘、消化器がんが専門。16年より東京歯科大学内科学講座客員教授を兼任。日本微小循環学会理事長、日本ヘリコバクター学会副理事長、日本潰瘍学会理事、日本神経消化器病学会理事、日本がん予防学会理事、日本高齢消化器病学会理事、米国消化器病学会(AGA)国際委員

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