健康ライフ
2018.08.24

髪の毛は健康のバロメーター

~美髪のための正しいケア~
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食事や運動など体の健康に気をつけている人でも、意外と見落としがちなのが、髪の毛の健康状態です。髪の毛は紫外線などのストレスやさまざまな生活習慣の影響を受け、体調が崩れたときに変化が現れやすいため、「健康のバロメーター」とも言えます。そんな髪の毛の老化を防ぎ、健やかに保つための方法を、女性専門の頭髪外来で診察に携わる、ウィメンズヘルスクリニック東京院長の浜中聡子先生に伺いました。

髪の毛は
生まれ変わっている

髪の毛は毛根にある毛母もうぼ細胞の働きによって、生えては抜けるというサイクルを繰り返しています。

髪の毛を作り出す「成長期」(2〜6年)、細胞の働きが少し衰える「退行期」(2〜3週間)、細胞が働きを止めてしまう「休止期」(3〜8カ月)を経て、1日に80〜100本は抜けると言われています。

一方、毛根では毛母細胞が働いて新たな髪も作られており、全体として一定の量を保っています。

しかし、加齢などさまざまな要因によってこのヘアサイクルが乱れると、薄毛・抜け毛などにつながります。

特に女性の場合、頭皮の血流低下やホルモンバランスの乱れなどにより、休止期が長くなるのが特徴で、毛が十分に成長できないまま、短くてやわらかい毛が抜け落ちるうえ、新しい毛が生えるまでに時間が掛かるようになり、40代以降になるとそれが顕著に見られます。

■髪の毛の構造とヘアサイクル
  • 健康なヘアサイクル
    髪の毛の成長期は2 ~ 6 年ごとに、退行期、休止期を経て長く太く硬い髪の毛が抜けていく。
  • 乱れたヘアサイクル
    髪の毛が十分に成長できないまま、短くて細くやわらかい抜け毛が目立つようになる。
浜中聡子著『女性のための“頭髪外来”』(扶桑社)より引用

女性の髪の毛の悩みは
多種多様

女性の髪の悩みで多いのが「抜け毛が増えた」「地肌が透ける(分け目が広がってきた、前髪が後退してきた)」「ボリュームが減る」などです。多くの日本人の場合は黒髪ですから、髪の量が減るとそのまま地肌とのコントラストが強く見えてしまうこともあります。

また、薄毛・抜け毛が気になり始める前に、「髪の毛が細く、やわらかくなってきた」「うねりや乾燥が強くなってきた」「白髪が増えた」といった悩みを感じる人も少なくありません。個人差もありますが、年代とともにこうした悩みがいくつも重なり合っていきます。

加齢による変化は誰にでも現れますが、ストレスの多い社会において、その影響から、髪の毛について悩み始める時期が早まるという人も一定数見られます。

治療や対策によってある程度、改善できる部分もあり、頭髪専門外来を設置する医療機関を訪れる人も増えていると言います。専門外来では女性ホルモンの分泌量や頭皮の血流の状態などを総合的に評価したうえで、その人に合う治療の選択肢を考えます。

加齢・血流の低下・
ホルモンバランスの乱れなどが原因に

女性の薄毛・抜け毛の原因は複雑で多種多様ですが、共通する背景として、以下の2つが挙げられます。

  • 1. 血流の低下
    年齢とともに全身の血流が低下しますが、頭皮も例外ではありません。毛根に対する血流量が落ちることで、細胞に栄養が行き渡りにくくなり、髪の毛の成長の妨げになったり、髪質悪化につながったりと言うことが考えられます。
  • 2. ホルモンバランスの乱れ(低下)
    女性ホルモン(特にエストロゲン)は髪の毛に大きな影響を及ぼします。女性は妊娠・出産、更年期、閉経といったライフイベントで女性ホルモンが大きく変動しますが、特に40代に入ると女性ホルモンの分泌が急激に低下し、薄毛・抜け毛につながりやすくなります。

一つだけではなく、いろいろな要因が重なり合っています。睡眠の質の悪化、栄養バランスの乱れ、過激なダイエットなどで影響が出る人もいますし、大病をしたり、精神的ストレスが慢性化することで抜け毛につながる場合もあります。

生活そのものが血流やホルモン変動に影響を与えますので、生活習慣を見直すことが大切です。過剰な飲酒、喫煙など体に良くない習慣は髪の毛にとっても良くありません。また、紫外線も髪の毛に影響します。

体の健康に良い生活で
髪の毛も健康に

髪の毛の老化を防ぎ、健やかに保つためには毎日のヘアケアや生活習慣が大きく影響していますので、血流やホルモンバランスを整えるセルフケアも大切になります。具体的には次のようなことに注意しましょう。

  • 栄養バランスの良い食事
    納豆や鶏むね肉(皮なし)といった高たんぱく・低脂肪の食事で、たんぱく質摂取の割合を落とさないように心掛けてください。野菜、果物、海藻類などでビタミン、ミネラルも摂取しましょう。
  • 質の良い睡眠を十分に取る
    寝つき・寝起きが良いか、途中で目覚めることがないかといった睡眠の質と、少なくとも6時間以上の睡眠時間の確保の両方が大切です。特に夏場は暑さで睡眠の質が落ちるため、起床時間や就寝時間をある程度同じ時間にしたり、冷房を効果的に使用したりと、生活リズムや睡眠環境の工夫を心掛けましょう。
  • ホルモンバランスを整える
    生理周期が安定しているかどうかが目安になります。無月経や生理不順、婦人科疾患は放置せず、医療機関へ相談しましょう。
  • 自分の頭皮に合うシャンプーを使う
    アミノ酸系のシャンプーは頭皮への負担が少ないと言われていますが、脱脂力(※)が足りない場合もあります。洗い心地や頭皮の状態を見て、自分に合うものを選びましょう。

    ※皮脂成分を取り去ること。

また、指通りよりも、髪の毛の生える土台である頭皮の状態を健やかに保つことが重要ですので、シャンプー後に地肌が乾燥したり、オイリーになったりしないものが良いでしょう。

トリートメントも髪の長さや状態に応じて調整します。また、シャンプー後にはぬれたまま放置せず、必ずドライヤーで手早く乾かしてください。

  • ブラッシングを見直す
    ブラッシングのしすぎは切れ毛や静電気で髪の毛を傷めることにもなるので、頻繁に行う必要はありません。シャンプー前の乾いた髪の毛を、外でついたホコリを落とすような感覚でブラッシングする程度で十分です。特にぬれた髪にブラッシングをするのは髪の毛に負担となり、かえってマイナスです。
  • 髪の毛の紫外線対策
    頭皮が日光を浴びると炎症が起こる場合があり、頭皮トラブルのもとになるため、帽子や日傘で紫外線を遮る対策をしましょう。アウトドアなどで長時間日光に当たるような場合は、頭皮用の日焼け止めなどを利用するのもお勧めです。

髪の毛に効果が現れるまでには時間がかかるので、早めに生活を見直し、できることから習慣化していきましょう。

髪の毛の老化が気になったら
専門の医療機関へ相談を

悩みの感じ方は人それぞれですが、今の状態を客観的に判断したうえで、まだ治療の必要なレベルでなければ何ができるのか、治療をするとしたらどんな治療をするのか、または更年期の影響があるとしたら、更年期症状に対するホルモン補充療法の適応になるかどうかなど、選択肢について知識を得るのは早い方が良いでしょう。

頭髪について専門に取り組む医師がいる医療機関も少しずつ増えてきていますので、気になることがあったら、一度相談してみることをお勧めします。

髪の毛は体調が崩れたときに真っ先に影響が出る場所であり、健康のバロメーターとも言えます。

イキイキとした活動的な日々を送るためにも、髪の毛を健やかに保ちましょう。

浜中 聡子 医療法人社団ウェルエイジング
ウィメンズヘルスクリニック東京 院長

医学博士。北里大学医学部卒業。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医など多数の資格を取得。女性ホルモンに着目し、心身ともに健康で充実した毎日をすごすことができるよう、医学的見地からのサポートを行う。著書に、『髪をあきらめない人は、3つの生活習慣をもっている』(学研プラス)『女性のための“頭髪外来”』(扶桑社)、など。

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