知っておきたい病気・医療
2018.01.12

油っこい料理が好きな人は“胆石”に注意!

~突然襲う激しい腹痛がサインに~
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ある日突然、胃のあたりが締めつけられるような鋭い痛みに襲われたら…。それは「胆石」が原因かもしれません。働き盛りの40代に多く見られるという「胆石症」。その原因や治療法、さらに予防法について、消化器外科を専門とする、東京臨海病院病院長の小林 滋さんに教えていただきました。

胆石ってなに?
胆のうの働きとは?

胆石とは「胆のう結石」と言われ、胆のうに多くできます。そのほか、肝内胆管にできる結石が「肝内結石」、総胆管にできる結石が「総胆管結石」です。「胆石症」とは、胆のうや胆管に結石ができる病気のことです。

正常な状態では溶けている成分が、何らかの原因で結晶となり、石のように固まってしまい「結石」になります。尿管にあれば「尿管結石」、腎臓にあれば「腎結石」など、結石のある場所で名称は変わります。

胆のうは肝臓の下に位置する、長径約8cmのとても小さな臓器です。食道や胃、腸などの消化管は5層構造になっていますが、胆のうは3層構造の薄い壁でできた小さな袋状です。

胆のうは、その薄くて小さな袋の中に「胆汁」を一時的にためる「貯蔵庫」のような働きをしています。胆汁とは肝臓で作られる消化液の一種で、胆のうによって濃縮され、胆のうの筋肉の収縮により十二指腸に分泌されます。食べたものが十二指腸で胆汁と混ざり合うことで脂肪の分解を促進し、腸に吸収されやすい形へと変わっていくのです。

■胆のうの位置と胆のう 結石(胆石)ができる場所

コレステロールが固まる
胆石が増加中

胆汁の中に含まれるさまざまな成分は、正常な状態では溶けています。ところが、胆のうの収縮機能が低下して、濃縮された胆汁が胆のうの中で停滞すると、溶けなくなった成分が固まってしまいます。これが胆石の正体です。

胆汁内のどの成分が固まったのかによって胆石の種類は分かれますが、近年特に多く見られるのは、コレステロールが固まった「コレステロール胆石」です。

胆汁に含まれるコレステロールには、食事によるものだけでなく、肝臓が薬やアルコールを代謝するときに作られるものなど何種類かあり、胆汁のコレステロールが過剰になるはっきりとした原因については、まだ医学的に明らかにされていません。

しかし、コレステロール胆石が増加している背景に、高脂肪・高カロリーの欧米型の食生活があることは確かです。脂身があるサーロインステーキやバターを使ったお菓子などの脂質が多い食事を好む人や高脂血症の人は、コレステロール胆石になる確率も高くなります。

胆石ができやすいのは
どういう人?

胆石ができやすい条件がいくつかあります。

  • どちらかといえば太っている
    コレステロール胆石は、食べることが好きで太り気味の人に多いといわれています。
  • ストレスが多い
    ストレスによって自律神経のバランスが乱れると内臓の働きにも影響が及び、その結果、胆汁が胆のうの中で滞って胆石ができる原因になる場合もあります。
  • 一日中座っていることが多い
    体を動かすことが少なく、一日中座る姿勢を続けていると、胆のうの収縮機能が低下して、胆石ができやすいといわれています。
  • 糖尿病である
    糖尿病を患っていると高脂血症にもなりやすいほか、自律神経障害が起きることで胆のうの収縮機能が低下し、胆石ができる場合があります。

このほか、40~50代で発症しやすい、男性より女性に多いといった特徴もあります。以上の条件に当てはまる人は、まずは生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

急激な発作を防ぐためにも
定期的な検査が大切

胆石症の典型的な発作として、「油っぽい食事の後に、みぞおちが絞られるような激しい痛みを感じる」ことが挙げられます。個人差や症状によって異なりますが、通常は15~20分程度で痛みが治まるのも特徴です。

ただし、こうした発作が起こるだけでなく、「腰が痛くて整形外科でレントゲンを撮ったら胆石が見つかった」「以前から自分では胃腸が弱いと思っていたが、検査をしたら胆石症と診断された」というようなケースも少なくありません。「サイレントストーン(無症状胆石)」といわれる、ほとんど症状の出ない胆石症もあります。

症状がないからと放置しておくと、知らず知らずのうちに進行し、ある日突然、急激な痛みに襲われる可能性があります。

また、医学的に証明されているわけではありませんが、30~40代で胆石ができた場合、胆のうがんのリスクが高まると考えられています。さらに、胆石が胆のうの壁を刺激し、慢性的な炎症や痛みを引き起こす場合もあります。このような悪化を防ぐためにも、定期的に腹部の超音波検査を受けることをお勧めします。

胆石症の治療は 腹腔 ふくくう 鏡を用いた胆のうの摘出手術が主流となっています。手術は麻酔も含めて1~2時間程度で終わり、日帰りや1泊入院で手術を行う医療機関が増えています。そのため回復も早く、すぐに日常生活に戻ることが可能です。

ただし、上腹部に強固な癒着(※)があったり、悪性疾患が疑われる場合は腹腔鏡手術を行うことはできません。また、炎症の程度によっては腹腔鏡でおなかの中を観察した後に、開腹手術に変更する場合もあります。

※本来なら分離しているはずの組織、皮膚や膜が、外傷や炎症によってくっついてしまうこと。胆のうは薄い壁でできているため、肝臓など他の臓器や血管を傷つける可能性があります。

胆石症予防のために
効果的な食生活は?

胆石症を防ぐには脂肪の多い食事に偏らないことが第一です。特に肉の脂身やラード、バターなど動物性の脂肪を多く含む食品はできるだけ控えましょう。常温で固まる性質がある脂肪には要注意です。

また、おやつの選び方も気をつけましょう。バターや生クリームをたっぷり使ったスイーツも脂質が多いので摂りすぎには注意です。

さらに、食事を抜くと胆のうの収縮機能を低下させる原因になります。規則正しく3食摂る習慣をつけましょう。

食事だけでなく運動も大切です。体を動かすことによって消化管の働きが高まり、胆のうの収縮も活発になるからです。軽度な運動、散歩など継続的にできるものを取り入れてみるのもよいでしょう。

小林 滋 日本私立学校振興・共済事業団 東京臨海病院病院長

1980年、順天堂大学医学部卒業。同大学医学部外科学教室講師を経て、2002年に東京臨海病院外科部長に就任、16年から現職。一般外科・体表の外科手術および消化器疾患の診断と外科治療を専門とし、特に、肝・胆・膵疾患に対する治療および胃・大腸に対する腹腔鏡手術を得意とする。日本外科学会指導医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会指導医、日本消化器外科学会認定医。医学博士。著書に『名医のわかりやすい胆石・胆のう炎』(同文書院)がある。

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