食で健康
2017.10.27

もう糖尿病は怖くない!?

~目からうろこの糖質摂取法とは~
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「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)」と、「糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備軍)」はいずれも全国で約1,000万人と推計される――。平成29年9月に、厚生労働省の平成28年「国民健康・栄養調査」でこのような結果が発表されました。このうち糖尿病有病者は年々増加しており、前回調査の平成24年からは約50万人も増えています。「初期には自覚症状が出にくく、死に至る病気ではないものの、脳梗塞や心筋梗塞、認知症などのリスクは格段に高まる」と栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅さんは語ります。糖尿病をはじめとする生活習慣病予防の重要なキーワードである「糖質」について、基本的な知識や正しい摂り方についてお聞きしました。

血糖とインスリンの
関係とは?

人間が生きていくために必要不可欠な三大栄養素である糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質。このうち脳や筋肉、内臓などの重要なエネルギー源となるのが糖質です。糖質は体内でブドウ糖に分解され、血液中に溶け込んで全身を巡ることでエネルギーを供給しています。この血液中に含まれるブドウ糖のことを「血糖」といいます。

血糖の量は食事をすると増え、血糖値が一時的に上昇します。しかし健康な人の体では1~2時間をピークに血糖の量が減り、血糖値も下がります。このように血糖をコントロールし、いつも一定の幅にキープする役割を担っているのが「インスリン」です。

インスリンはすい臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンです。食事によって血糖が増えるとβ細胞が感知してインスリンの分泌を増やし、全身の臓器が血糖を摂り込んでエネルギーとして利用するよう働きかけます。その結果、血糖の量は徐々に減り、食事をする前の血糖値へと次第に戻っていくのです。

インスリンにはまた、血糖の一部を、エネルギーに変換しやすいグリコーゲンという物質に変え、肝臓や筋肉に蓄える働きもあります。

インスリンは血糖値を下げるほぼ唯一のホルモンですが、「肥満ホルモン」という別名もあります。というのも、血糖が過剰に上昇した状態が続くと、余った糖を脂肪に変え、体に蓄える働きがあるからです。糖質を摂り過ぎると体重が増加したり、メタボリックシンドロームになりやすくなる理由もここにあります。

また、インスリンの分泌量が少なくなったり、インスリンの働きが悪くなると血糖値を下げられなくなり、高血糖状態になります。この状態が改善されずにずっと続くと、糖尿病(=2型糖尿病)を発症します。

ステーキより 蕎麦 そば のほうが
糖質は多い!

栗原さんが調べたデータによると、男性約250g、女性約200g。これが健康を維持するために1日に摂ってもいい糖質量の目安です。しかし、2016年に20~60代の男女1,000人を対象に実施した「食習慣と糖に関する実態調査」では、1日の平均糖質摂取量が男性309g、女性332gと、男女ともに糖質の摂り過ぎ傾向にあることが明らかになりました。

■1日の食生活で摂取している糖質量 出典:「栗原 毅先生・サッポロビール」調べ

決して普段から暴飲暴食をしているわけではなく、むしろ健康意識の高い人がほとんどです。それなのに糖質を摂り過ぎてしまっているのは、多くの人が摂取カロリーにばかり意識を向けているからだと考えられます。

「肉料理はカロリーが高いからダメ。蕎麦なら低カロリーだから大丈夫」という考えのもとにメニューを選んでいる人は多いかもしれませんが、肥満や糖尿病などの生活習慣病を予防するうえでより重要なのは糖質の量です。例えばサーロインステーキの糖質量は1kgあたりわずか6gですが、蕎麦には200gあたり48gもの糖質が含まれています。先に挙げたとおり、1日の糖質摂取量の目安は男性が250g、女性が200gですから、蕎麦だけで男性なら1日の約5分の1、女性なら約4分の1の糖質を摂取してしまうことになります。

主な食品の糖質量をここでチェックしてみましょう。

■主な食品に含まれる糖質量

※目安量(正味量)=糖質量で表記しています。

出典:栗原 毅著『糖質ちょいオフダイエット 90日ダイアリーつき』(講談社)を参考に作成

「不足しがちな栄養を摂取できて体にいいはず」とフルーツや野菜・果物ミックスジュースなどを積極的に摂っている人もいらっしゃるかもしれませんが、いずれも糖質の量は意外なほど多いので摂り過ぎには注意が必要です。「甘いものや炭水化物は控えているのになぜか太る」「なかなか体重が減らない」という人は、それ以外に好んで摂取している食品に糖質の多いものがないか、見直してみることも大切です。

主食を10%減らす
「糖質ちょいオフ」がお勧め

近年流行している糖質制限食の糖質摂取量は1日平均130g程度とされていますが、健康のためにはそこまで減らす必要はありません。また、「炭水化物は一切摂らない!」などと極端な糖質制限をすると、仮に短期間で体重を減らすことができたとしても、リバウンドする可能性が極めて高くなります。

糖尿病などの生活習慣病を予防し、いつまでも若々しく健やかな体を保つためには、無理なく楽しみながら続けられる食生活が大切です。そこでお勧めしたいのが、ご飯や麺、パンなどの主食を10%程度減らす、「糖質ちょいオフ」ダイエットです。

例えば、1日の食事で摂取した栄養の質を評価する指標の一つとして「PFCバランス」があります。従来はP(たんぱく質)とF(脂肪)、そしてC(炭水化物)の割合が2:2:6になるのがよしとされてきましたが、「糖質ちょいオフ」のためには炭水化物を5割以下に減らすのが理想的です。たんぱく質3:脂肪2:炭水化物5の割合にすると、糖質の摂り過ぎを防ぐことができるベストバランスになります。

「ご飯をこれまでよりもほんのちょっと少なめによそう」といった簡単な工夫で主食を10%減らすだけで、内臓脂肪は次第に減っていきます。内臓脂肪は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くしたり、血糖値を上げるサイトカインという物質を分泌する諸悪の根源です。これが解消されることで、糖尿病も劇的に改善するのです。

食べる順序や間食の選び方も
ひと工夫を

「糖質ちょいオフ」に加えて、以下のような食べ方もぜひ意識して実践しましょう。

■ 「ベジ・ファースト」が鉄則

最初に糖質の多い炭水化物を摂ると、血糖値が急上昇します。するとインスリンが大量に分泌され、余分な糖質が脂肪となり、体内に蓄積されやすくなります。

このように血糖値を急激に上げたり下げたりするような食事をくり返していると、すい臓にも負担がかかります。やがてインスリンの分泌が悪くなり、糖尿病を加速させる要因になっていきます。

そこで重要なのが、食事の際には血糖値の上がりにくい食品からまず食べることです。お勧めは食物繊維が豊富な野菜や海藻、きのこなどの副菜です。食物繊維には糖質の吸収を遅らせる働きがあり、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

副菜の次に肉や魚、大豆製品などの主菜を、その次にスープや味噌汁などの汁物、そして最後にご飯や麺などの主食、という順に食べるのがベストです。

主食を最後に摂ると糖質の吸収が遅くなるのはもちろん、この段階ですでにある程度おなかが満たされているため、量そのものを控えることもできて一石二鳥です。

■ ひと口食べたら31回

脳にある満腹中枢が刺激されて満腹感を覚えるのは、食事を開始してから約20分後です。ところがおなかがすいていたり、時間が無かったりして急いで食べると、満腹になったサインが脳から発せられる前にどんどん胃に食べ物を入れてしまうため、つい食べ過ぎてしまうことになります。

血糖値の急上昇を抑え、食べ過ぎを防ぐためにも、ゆっくりよく噛んで味わうことを心がけましょう。

一般的によくいわれるのは「30回噛む」ということですが、しっかり噛むように31回を心がけてください。ただし、噛む回数ばかり気にしていると逆にストレスになる可能性もありますから、よく噛んで食材の風味などを十分に味わい、食事の時間を楽しむようにしましょう。

■小腹がすいたら高カカオチョコを

間食や、夕食が遅くなりそうなときにちょっと口に入れるのにお勧めなのが、カカオ含有率70%以上の高カカオチョコレートです。チョコレートはカロリー自体が高めですが、実はカカオ成分が高いものに関しては糖質量はそれほど多くないのです。

また、小腸での糖質の吸収を抑える食物繊維と活性酸素を除去するポリフェノールも多く含まれています。さらに渋みの成分である「テオブロミン」が含まれており、満腹中枢を刺激して食欲を抑える効果もあります。

小腹がすいたら一かけら(5g程度)の高カカオチョコレートを摂取すると、空腹感がやわらぎ、その後の食べ過ぎの防止にもつながります。

スロースクワットで
脂肪をためにくい体に

脂肪は内臓や皮下に蓄積するだけでなく、筋肉にも「異所性脂肪」として蓄積され、インスリンの働きを悪くする要因になることが最近の研究でわかっています。この筋肉の細胞の中に過剰に脂肪が蓄積した状態を「脂肪筋」といいます。

脂肪筋が増え、筋肉内でインスリンがうまく働かず、糖質を摂り込みにくくなると、血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のリスクを高める原因になります。太っていなくても脂肪筋になる可能性はあるので注意が必要です。

糖尿病の予防にはこれまで述べてきた「糖質ちょいオフ」の食生活とともに、毎日の運動も欠かせません。とくに重要なのが、筋肉量を増やす筋肉トレーニングです。基礎代謝が上がり、脂肪がつきにくく太りにくい体に近づけることができます。

とりわけ有効なのが、スロースクワットです。

  • 通常のスクワット
  • スロースクワット

(1)足を肩幅に開いて立ち、太ももが地面と平行になるくらいまで腰を落とします。このとき、膝がつま先より前に出ないように注意をしてください。

(2)太ももが一番きついところで10秒キープします。

(3)ゆっくり立ち上がり、膝を伸ばしきる手前で止め、再び(2)の位置まで戻ります。これを朝晩各5セットずつ行いましょう。

出典:栗原 毅先生指導の下、石井直方著『スロトレ』(高橋書店)を参考に作成

筋肉にずっと力を加え続けながら行うことで静脈が圧迫され、筋肉の中の血流が制限されて酸素不足の状態になります。するともっと重い負荷で運動したときと同じように、筋肉からは多量の乳酸が発生します。乳酸には体脂肪を分解する成長ホルモンの分泌を促す作用があるため、軽い負荷の運動でも筋肉が作られ、脂肪の減少につながります。出勤前や入浴前など時間を決めて、スロースクワットを毎日の習慣にしましょう。
バランスの取れた食事と適度な運動で、早めに糖尿病の予防をすることが大切です。

栗原 毅 栗原クリニック東京・日本橋 院長
慶應義塾大学特任教授

1978年、北里大学医学部卒業。東京女子医科大学消化器病センター内科、同大学青山病院成人医学センター助教授、中国中医研究院客員教授、東京女子医科大学教授、同大学特定診療所・戸塚ロイヤルクリニック所長を経て、2008年に現クリニックを開院。脂肪肝などの消化器疾患の治療やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防・改善に力を注ぐ。「血液サラサラ」の提唱者の一人でもある。『脂肪肝はちょっとしたコツでラクラク解消する 1日25gのチョコが効く!』(河出書房新書)、『糖尿病の食事はここだけ変えれば簡単にヘモグロビンA1cが下がる』(主婦の友社)ほか著書多数。

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