健康ライフ
2023.06.09

女性の薄毛は治療で回復する?

~正しい知識で髪の悩みを解消~
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
女性の薄毛は治療で回復する?

急に抜け毛が増えてきた、髪のボリュームが減ってヘアスタイルが決まらなくなってきた……。このように薄毛に悩む女性は少なくありません。育毛剤でケアしたり、ウィッグでカバーしたりするなどさまざまな対策がありますが、早めの治療も重要な選択肢の一つです。ホームケアで可能な対策や、医療機関で行われている治療などについて、クレアージュ エイジングケアクリニック総院長の浜中聡子先生に伺いました。

ヘアサイクルの乱れが
細毛、抜け毛、薄毛を招く

女性の薄毛は医学的に「女性型脱毛症」と呼ばれます。男性の場合は「男性型脱毛症(AGA)」と言い、いずれも髪の毛の「ヘアサイクル(毛周期)」が乱れることによって生じると考えられています。
ヘアサイクルとは、髪が生えて成長し、自然と抜けてまた生えてくるサイクルのことを言い、「成長期」「退行期」「休止期」の大きく3つに分けられます。

  • 成長期
    毛根にある毛母細胞が活発に分裂・増殖し、太くしっかりした毛髪へと成長する期間(2~6年)。
  • 退行期
    毛母細胞の働きが低下し、毛髪の成長が弱まる期間(2~3週間)。
  • 休止期
    毛母細胞の分裂が止まり、次の成長期に向けて古い毛髪が抜ける期間(3~8カ月)。
■健康なヘアサイクル 健康なヘアサイクル 参考:齊藤あき、浜中聡子監修『50代からの髪がみるみるよみがえる! 美髪ケア大全』(主婦の友社)をもとに作成

健康的なヘアサイクルでは、一般的に1日に80~100本程度の毛髪が抜けると言われていますが、同時に新たな毛髪を作る毛母細胞も働いているため、全体としては一定の量が保たれています。
しかし、加齢などの要因によってヘアサイクルが乱れると、成長期が短くなり、太くしっかりした毛髪を育てることができなくなります。

細くて軟らかい毛髪のまま、退行期、休止期へと移行していき、その過程で短く軟らかい毛が抜けていきます。
その結果、次第に地肌が透けて見える、分け目が目立つといった状態につながることになります。特に、生え際や頭頂部の毛髪が薄くなりやすいです。

■乱れたヘアサイクル 乱れたヘアサイクル 参考:齊藤あき、浜中聡子監修『50代からの髪がみるみるよみがえる! 美髪ケア大全』(主婦の友社)をもとに作成

男性型と女性型では
脱毛症の原因が大きく異なる

ヘアサイクルの乱れによって、毛髪が細く軟らかくなったり、抜け毛が増えたりして薄毛になるメカニズムは男女に共通していますが、男性型脱毛症と女性型脱毛症にはさまざまな違いがあります。

まず、男性型脱毛症の主な原因は「遺伝」と「男性ホルモンの関与」です。特に脱毛に大きく関わるのが、男性ホルモンの一種「ジヒドロテストステロン(DHT)」です。このジヒドロテストステロンが増えないようにする治療が広く行われています。

一方、女性型脱毛症の場合は、特定の原因物質があるかどうかは今のところ確認されていません。
女性型脱毛症にも男性ホルモンが原因で起こる「女性男性型脱毛症(FAGA)」がありますが、女性の場合は加齢による女性ホルモンの変化、頭皮の血流低下など、さまざまな原因が考えられます。また、いくつかの原因が複合的に重なっている場合もあります。

■薄毛の原因となり得る主な症状
  • 女性型脱毛
  • 原因不明の慢性休止期脱毛
  • 膠原(こうげん)病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛
  • 貧血
  • 急激なダイエットによる脱毛
  • 環境の変化
  • 食生活の変化
  • 睡眠不足
  • 薬剤による脱毛

など

バランスの良い食事が摂れているか、良質な睡眠がとれているかなど、まずは生活習慣を見直してみましょう。ただし、自己判断するのではなく、なるべく早く薄毛や脱毛症の治療を専門的に行う医療機関を受診することが大切です。その際には、原因となり得る環境を医者に伝えると良いでしょう。

薄毛治療によく使われるのが
ミノキシジルの外用

女性型脱毛症の治療にはどのような方法があるのか、気になる人も多いことでしょう。
『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』では、治療の推奨度について下記のようにまとめられています。

■各治療法の推奨度 女性型脱毛症治療推奨度

推奨度

  • A:行うよう強く勧める
  • B:行うよう勧める
  • C1:行ってもよい
  • C2:行わないほうがよい
  • D:行うべきではない
出典:『男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版』(PDF)より一部抜粋

フィナステリド、デュタステリドは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンを抑える内服薬です。
女性型脱毛症においては、デュタステリドの内服について推奨度D(行うべきではない)となっており、原則として服用は認められていません。特に妊娠中や授乳中は胎児や乳児へのリスクが懸念されることから、禁忌とされています。

男女ともに推奨度A(行うよう強く勧める)とされているのが、ミノキシジルの外用です。
ミノキシジルの外用薬は、脱毛している頭皮に塗布する一般医薬品として国内で承認されています。
現在は、厚生労働省から認可を受けたミノキシジル配合の発毛剤が薬局やドラッグストアなどで市販されており、市販の発毛剤に配合できるミノキシジルの濃度は男性が5%まで、女性が1%までと定められています。
いずれも一般医薬品の第1類医薬品に分類されるため、薬剤師のいる薬局やドラッグストアで薬剤師の指導のもとで購入する必要があります。また、副作用のリスクを防ぐためにも、説明書に記載された用法・用量を守ることが大切です。

気になったら薄毛や脱毛専門の
医療機関を早めに受診

前述のとおり、市販のミノキシジルが配合された発毛剤の濃度は女性の場合で1%までですが、薄毛や脱毛の治療を専門的に行う医療機関では6%以上の高濃度のミノキシジル外用薬を使用することもあります。
薄毛の症状に応じた処方を行い、医師の指導のもとで安全に治療を続けられることが医療機関を受診するメリットといえます。ミノキシジル外用薬だけでなく、ホルモン治療やPRP毛髪再生医療、植毛など、多様な症状やニーズに対応する治療が行われています。

一般的に女性の場合は深刻な状態になるまで薄毛を放置する人は少なく、気になったら早めに受診する傾向が高いようです。そのほうが悪化を防ぎ、効果的な治療につなげることができるのでお勧めです。
ホームページに情報がなく、突然高額な治療費を提示するような医療機関は避けるのが無難です。医師の対応が誠実であるか、信頼できるか、ということも医療機関を選ぶ際の基準の一つにするとよいでしょう。

なお、ホームケアも医療機関での治療も、すぐに結果が出ないからと中断せず、継続していくことが大切です。個人差はありますが、一般的には6~7カ月程度で薄毛の改善が期待できます。

浜中 聡子 クレアージュ エイジングケアクリニック総院長

医学博士。北里大学医学部卒業。同大学大学院医療系研究科 臨床医科学群精神科学修了。同大学病院救急救命センター、亀田総合病院精神科、国際医療福祉大学熱海病院精神科・講師、AACクリニック銀座院長などを経て、2020年11月、クレアージュ東京 エイジングケアクリニック(旧・Dクリニック東京ウィメンズ)院長、21年クレアージュ エイジングケアクリニック総院長に就任。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医など多数の資格を持つ。

プロフィール写真