健康ライフ
2022.07.08

夏は虫刺されに要注意!

~レジャーの前に知っておきたい、症状と対処法~
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夏は虫刺されに要注意!

夏は虫に刺されることが増える季節。野外でのレジャーに出かけた際に虫に刺され、見慣れない症状が出ることもあります。虫刺されにはどう対処したら良いのでしょうか。また、どんなときに医療機関の受診が必要なのでしょうか。兵庫医科大学医学部皮膚科学の夏秋優教授に伺いました。

虫刺されには
どんな種類があるのか?

日常的にある虫刺されとして最も多いのは、蚊によるものでしょう。しかし、人間を刺してさまざまな症状を引き起こす虫は蚊だけではありません。虫刺されは、以下の3種類に分けられます。

  • 1.血を吸う虫によるもの(吸血性)
    蚊、ブユ、アブ、ノミ、ダニなど。人間を刺す際、皮膚に唾液腺物質を注入してから吸血します。この唾液腺物質によってアレルギー反応が生じ、かゆみや赤みなどの症状が出ます。
  • 2.刺したり咬んだりする虫によるもの(刺咬(しこう)性)
    ハチ、ムカデ、クモなど。毒針や毒牙によって有毒な成分が皮膚に注入されることで、痛みが出ます。アレルギー反応が生じることもあります。
  • 3.触れると毒がある虫によるもの(接触性)
    いわゆる毛虫が該当しますが、すべての毛虫に毒があるわけではなく、毒があるのはドクガ類やイラガ類の幼虫など一部のみです。触れると、毒によってアレルギー反応が生じて発疹が出たり、毒の刺激で痛みが生じたりします。

虫刺されの症状は
毒やアレルギーが原因

虫刺されによる症状には、かゆみや痛み、赤み、腫れなどがありますが、虫の種類によって異なり、個人差もあります。虫刺されによる症状は、大きく分けると、虫の持つ毒による刺激が原因となるものと、毒や唾液腺成分によるアレルギー反応によるものに分けられます。アレルギー反応はさらに、刺された直後から15分ほどでかゆみや赤みなどが生じる「即時型反応」と、1~2日経ってからかゆみや腫れなどが生じる「遅延型反応」に分けられます。

アレルギー反応の場合、最初のうちは遅延型反応が起こり、その虫に刺される経験を繰り返すうちに即時型反応が出やすくなります。例えば、蚊に刺されると、子どものうちは翌日以降に腫れることが多いですが、年齢を重ねるにつれ、刺されてすぐにかゆみを感じるようになります。一方、山でのレジャーで刺されやすいブユは、日常では刺される機会が多くないため、大人でも遅延型反応が生じることが多く、後から大きく腫れることもあります。

アレルギー反応の中でも注意したいのが、アナフィラキシーです。代表的なものは、ハチによるアナフィラキシーです。過去にハチに刺されたことがあると、再度刺された際にアナフィラキシーを起こすことがあります。刺されてから15分以内に全身の蕁麻疹(じんましん)、吐き気や嘔吐、呼吸困難などが生じた場合は、すぐに救急車を呼びましょう。

虫に刺されてしまったら?

ハチや毛虫などに刺されて痛みがある場合は、保冷剤や冷えた缶ジュースなどで冷却して様子を見ます。かゆみは軽症であれば市販薬で対処が可能です。メントールという清涼成分の入った塗り薬を使うと良いでしょう。応急処置としては、痛みの場合と同様に冷やすことでかゆみが和らぎます。かゆみや腫れが続く場合は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイドホルモン)の入った塗り薬が効果的です。

医療機関を受診したほうが良いのは、以下の3つのケースです。

  • 1.症状が強くて市販薬で対処できない場合
    大きく腫れている場合や、痛みやかゆみがひどい場合などは、皮膚科を受診して薬を処方してもらいましょう。塗り薬だけでなく、飲み薬を処方されることもあります。
  • 2.刺された場所を掻きむしってしまった場合
    特に、水ぶくれやただれが見られる場合は、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)(とびひ)の可能性があるため、抗生物質による治療が必要です。
  • 3.マダニに刺された場合
    マダニはダニの一種で、5~7月頃に活動がピークとなる吸血性の虫です。刺された瞬間は気付かないことが多いですが、口を人間の皮膚にがっちり固定して1週間ほど吸血し続けます。吸着力は強力で、気付いたときに引っ張っても取れません。無理に取ろうとするとマダニの口の一部が皮膚の中に残ってしまう場合があるため、医療機関で取り除いてもらいましょう。切開が必要になる場合もあります。また、頻度は高くありませんが、マダニは「日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)」や「ライム病」などの他、「重症熱性血小板減少症候群」という治療方法の確立されていない感染症を媒介することもあります。 マダニ刺症(皮膚に吸着したタカサゴキララマダニ若虫 写真提供:兵庫医科大学医学部皮膚科学 夏秋優教授

知っておきたい
効果的な虫刺され対策

虫に刺されないための予防策も知っておきましょう。蚊やブユ、マダニなど吸血性の虫に刺されないようにするためには、野外では肌の露出を避けることです。暑い時期は熱中症にも注意が必要ですが、虫刺され予防の観点では、長袖・長ズボンを着用することが大切です。

また、虫よけスプレーも使用しましょう。「ディート」または「イカリジン」という成分が含まれた製品が効果的ですので、購入時に製品の成分を確認してください。ただし、ディートは、子どもに対する使用制限があることに注意しましょう(6カ月未満の子どもには使用不可、6カ月~2歳未満では1日1回まで、2~12歳未満では1日3回まで)。イカリジンは年齢を問わず使用可能です。

肌にスプレーした後は、手でまんべんなく塗り伸ばすようにしましょう。汗をかいたら落ちてしまいますので、数時間おきにスプレーしなおすようにします。さらに、マダニなどは足元からズボンの裾に入り込んで刺すことがあります。靴下やズボンの裾などにもしっかり虫よけスプレーをしておきましょう。服の上からスプレーしても効果があります。ただし、ディート配合の製品は化学繊維を傷めることがあるため、使用上の注意を読んでから使うようにしましょう。

なお、虫よけスプレーは吸血性の虫に対処するためのものです。それ以外の虫には殺虫剤が有効ですので、野外レジャーの際には携帯すると良いでしょう。そして、できるだけ近づかない、触らないことが虫刺されの予防になります。ハチの場合は、巣を見かけても近づかないこと、万一ハチが近づいてきたら刺激しないように後ずさりしながらゆっくりその場を離れるようにすることが大切です。

夏秋 優 兵庫医科大学医学部皮膚科学教授

兵庫医科大学卒業、同大学大学院(皮膚科)修了。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科の研究員を務め、大阪府済生会吹田病院皮膚科医長などを経て、2000年より兵庫医科大学皮膚科助教授(2009年より准教授)、2021年より現職。専門は、衛生害虫による皮膚炎や皮膚疾患の漢方治療。著書に『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(学研メディカル秀潤社)などがある。

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