食で健康
2018.04.20

賢く食べてコレステロール値を下げる

~無意識のうちに食べ過ぎていませんか?~
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厚生労働省平成26年「患者調査の概況」によると、日本の約206万人が脂質異常症(高脂血症)を患っています。脂質異常症は「高LDLコレステロール」「低HDLコレステロール」「高中性脂肪」の3つのタイプに分かれます。中でも高LDLコレステロールは、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞等の要因になる場合もあります。そこで、LDLコレステロールを増やさない適切な食事の摂り方や生活習慣のポイントについて、岡部クリニック院長の岡部正さんに伺いました。

コレステロールの
「悪玉」「善玉」って何?

コレステロール=体に悪いもの。何となくそのようなイメージをもっていませんか? しかし、コレステロールは健康に欠かせないものなのです。コレステロールは、人間の体内に存在している脂質の一つで、次のような重要な役割を果たしています。

  • およそ60兆個におよぶと言われる体の細胞の膜を作る
  • 性ホルモンや副腎皮質ホルモン、胆汁酸等を作る

コレステロールは肉類、卵類、乳製品等に多く含まれますが、こうした食品から摂取したコレステロールは血液中に吸収されます。それとは別に、大部分のコレステロールは肝臓で合成され、たんぱく質と結合し、リポたんぱくという粒子となって全身へと運ばれます。

リポたんぱくにはいくつか種類がありますが、特にLDL(低密度リポたんぱく)とHDL(高密度リポたんぱく)が動脈硬化症と関係があります。それぞれのリポたんぱくに含まれるコレステロールを、LDLコレステロール、HDLコレステロールといい、それぞれ次のような働きがあります。

  • LDLコレステロール
    肝臓で合成され、全身の細胞や臓器に運ばれるコレステロール。
  • HDLコレステロール
    全身から回収され肝臓に戻るコレステロール。

健康を保つためには、どちらもバランスよく存在することが重要です。LDLコレステロールが増え過ぎて血液中にあふれてしまうと、動脈硬化を引き起こす要因になります。LDLコレステロールが「悪玉コレステロール」と言われるのはこのためです。

一方、HDLコレステロールには動脈硬化を防ぐ働きがあることから「善玉コレステロール」と呼ばれます。便宜上、善悪で分けられているものの、どちらも同じコレステロールであり、本来体に必要なものです。両者のバランスを崩さないように、適切な生活習慣を心がけることが大切です。

男性に多い早食い・ドカ食い、
女性は間食に要注意

動脈硬化の要因となるLDLコレステロールが増え過ぎてしまう大きな原因の一つに、「食べ過ぎ」があります。

一日の食事量には個人差がありますが、一般的に次のような傾向が多く見られます。

  • 男性
    カレーライスや牛丼、カツ丼、ラーメン等高カロリーな単品メニューを噛まずに早食いしている
  • 女性
    食事量は控えめでも、間食でケーキやクッキー、アイスクリーム等をよく食べる

男性に多い、「早食い」「ドカ食い」は、知らず知らずのうちに食べ過ぎを招きます。仕事が忙しくてやむを得ないこともあるかもしれませんが、空腹を最大限まで我慢した挙げ句、カロリーの高い食事を一気に食べるようなことは避けましょう。空腹時に食べ過ぎると、余分に摂取したカロリーが内臓脂肪としてより蓄積されやすくなります。
また、脳の満腹中枢が「満腹になった」と信号を出すのは、食事を始めてから20分後です。早食いをすると、満腹以上に食べ過ぎてしまいがちになります。

こうした状況を回避するためには、次のようなことを心がけると効果的です。

  • 食事の前に1杯の水を飲む。あるいは主食やメーンの料理を食べる前に、味噌汁やスープ、サラダや野菜の小鉢等からゆっくり食べ始める。
  • 最低でもひと口5噛み、通常は10回噛んでから次のおかずに手をつける。
  • 煮魚より焼き魚、ハンバーグよりステーキというように、食べるのに手間がかかったり、咀嚼そしゃくに時間がかかるメニューを選ぶ。

女性が間食でよく食べる洋菓子等は、コレステロールが気になる人にとっては“天敵”だと心得ましょう。ケーキや菓子パン、クッキー、ドーナツ、デニッシュ等の材料である卵やバター、生クリーム、牛乳はいずれも動物性脂肪を多く含む食品です。カロリーも高く、肝臓でコレステロールを作りやすくする働きを持っています。どうしても間食を止められない場合は、次のような方法で摂るのがお勧めです。

  • 洋菓子より和菓子を選ぶ。
  • お菓子は今までの半分にする。
  • アイスクリームよりシャーベットやかき氷を選ぶ。

なお、男女に関係なく、動物性脂肪の摂り過ぎには注意が必要です。特にコレステロールが気になる人は、牛・豚の霜降り肉(カルビ等)や豚骨スープ等はできるだけ控えてください。

食事日記をつけて
自分の食べ癖を知ろう

痩せているのに、遺伝的な体質によってLDLコレステロール値が高い人も中にはいます。

両親や兄弟・姉妹、祖父母等、肉親の中にLDLコレステロール値が高い人がいる、あるいは若くて動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞等の生活習慣病を発症した人がいる場合は、より注意したほうがよいでしょう。

しかし、脂質異常症を発症する人の多くは、食べ過ぎや運動不足等の生活習慣によって体重が増加する傾向にあります。

「そんなに食べていないのに太ってしまう」という声もよく耳にしますが、それは自分で自覚していない可能性があります。口寂しさからつい無意識に食べているものが、意外な量になっている場合も実は多いのです。そこでぜひつけてほしいのが、次のような食事日記です。

■ 食事日記の記入例
<ある平日の記録>
<ある休日の記録>

1週間のうち平日と週末から3日間選び記録するだけで、自分の普段の食生活の傾向を客観的に把握することができます。飲み物から間食も含め、口にしたものはすべて量まで正確に記入しましょう。実は意外なほど食べていることに気がつくはずです。

また、【どこで何をしながら】【どんな気分で】口にしたのか、そのときに【空腹感<あり+ なし->】はどうだったのかもきちんと記録することが大切です。

空腹を感じて食事をするのは普通のことですが、食欲とは関係なくストレスを解消するために甘いもの等を食べることが習慣になると太りやすくなります。どのような気分のときに食べ過ぎてしまうのかを把握することは、無駄食いをコントロールするうえで有効です。

善玉コレステロールを
増やすには?

増え過ぎたLDLコレステロールを減らすと同時に、HDLコレステロールを増やすための習慣を身につけることも大切です。とりわけ有効なのは定期的な運動です。ウオーキングやジョギング等の有酸素運動をメーンに、適度な筋トレもプラスすると効果的です。

また、トマトに含まれる色素成分リコピンにHDLコレステロールを増やす働きがあることも分かってきました。食塩無添加のトマトジュース1日200ml程度を継続して摂ることで効果が得られると言います。

健康に悪い習慣は止めて、良い習慣を長く継続させていくことが重要です。どのような方法なら長く続けることができるのか、まずはしっかり見極め、できるだけ早く実行に移していきましょう。

岡部 正 岡部クリニック院長

1978年、慶応義塾大学医学部卒業。カナダ・カルガリー大学留学。亀田総合病院副院長を務めた後、96年、東京・銀座に岡部クリニックを設立。オーダーメイド医療を理想に掲げ、生活習慣病の予防と治療に長年携わる。日本病態栄養学会評議員、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本肥満学会会員。医学博士。『ズボラでも中性脂肪とコレステロールがみるみる下がる47の方法』(アスコム)、『コレステロールと中性脂肪を自力で下げる本』(宝島社)等著書多数。

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