健康ライフ
2021.03.12

心に効く!書く瞑想めいそう「ジャーナリング」

~メンタル不調の改善につなげよう~
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身の回りを取り巻く環境の変化や人間関係など、さまざまな要因によってメンタル面での不調を感じる人が増えています。深刻な状態に陥らないためには、できるだけ早く不調を自覚し、休息などの適切な対策をとることが大切です。そのための効果的な方法の一つとして注目が高まっているのが、“書く瞑想”と言われる「ジャーナリング」です。その具体的な方法やポイントなどについて、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事の荻野淳也さんに伺いました。

自分の今の状態を客観的に知ることが
メンタル不調を改善する第一歩

いつも気分が沈んでいる、なんとなく不安で心細い、気持ちが落ち着かない、ちょっとしたことでもついイライラしてしまう、考えていることがまとまらない…。メンタル不調の表れ方や感じ方は人によってさまざまですが、不調を改善するための大切なポイントは、不調の原因を的確に知ることです。

例えば、体の不調のうち、腹痛の場合、「痛みが起きているのは胃か腸か」「原因は食べ過ぎか、あるいは何かにあたったのか」など、一つひとつを確認したうえで対処していくのが一般的です。

しかし、メンタルのことになると、そもそも不調であることに気付きにくかったり、不調を改善する方法が分からず、そのままやり過ごしてしまったりするケースが少なくありません。

メンタル不調を重症化させないためにも、「自分の心に生じている不調はどのようなものなのか」「どんな要因によって不調が生じているのか」といったことを、まず自分自身で認識することがとても大切です。

自分の心の状態や、不調の原因などを把握できれば、「今は心が疲れ気味だから、週末は好きな音楽を聴きながらゆっくり休もう」と言うように、改善へつなげるための行動も起こしやすくなります。

とはいえ、自分で自分自身の内面を客観的に観察し、現在の状態を正しく認識するのはなかなか難しいものです。そこで取り入れたいのが“書く瞑想”と言われる「ジャーナリング」です。

“書く瞑想”と言われる「ジャーナリング」

うまく書こうとするのではなく
思い浮かぶことをあるがままに書く

ジャーナリングは、マインドフルネス(※)の状態に至るための手法の一つです。
マインドフルネスとは「この瞬間にしっかりと注意が注がれている状態」を指します。ジャーナリングでは自分の思いや考えなどを書くことで、「この瞬間に集中する」状態をつくり上げていきます。

※マインドフルネスについては、過去の記事「マインドフルネスで集中力アップ!」をご参照ください。

具体的には次のような手順で行います。

  • 1.紙と筆記用具を用意する
  • 2.書くテーマを決める
  • 3.制限時間を設定する
  • 4.制限時間内に、2で決めたテーマについて、頭に浮かんだことを何でもいいから書いていく
  • 5.時間がきたら、紙の上に書かれた言葉を観察する

例えば、テーマを「ベストな状態のときの自分」とし、制限時間を5分と設定したなら、5分間ずっとベストな状態なときの自分について思い浮かぶことを書き続けていきます。

「頭の中で書きたいことを一旦整理してから始めよう」と思う人もいるかもしれませんが、ジャーナリングの大きなポイントの一つに「頭で考えず、手を動かす」ということがあります。手を止めて考えるのではなく、思い浮かぶことを、あるがままに書いていきましょう。もし何も書くことがないのなら、「書くことがない」もしくは、「ない」と書きましょう。つまり、頭に浮かんでいることを、あるがまま認識して書くのです。

誤字・脱字の有無や、人からどう思われるかなど他者の評価を気にする必要もありません。自分自身のためだけに手を動かし続けましょう。

指先を動かすことで、脳の神経細胞であるニューロンの連結が促進され、脳が刺激されます。パソコンの場合、キーボードを打つ行為は単純な動きになることから、書くことで指を動かす方が効果的だと言われています。

書き続けることで、紙の上には自分の頭に浮かんだ言葉がどんどん広がっていきます。制限時間がきたら、今度はその言葉を観察してみましょう。自分では自覚していなかった感情や、それらの言葉から浮かび上がってくる自分の本心など、さまざまな気付きや発見がきっとあるはずです。

ジャーナリングを実践することにより、「自分自身を知り、自己認識力を高める」効果が期待できます。今の自分自身の心の状態を客観的に知ることで、メンタル不調にも早く気付けるようになり、適切な対策へとつなげることができます。

同じテーマについて
定期的に書く習慣を

ジャーナリングを始めるにあたって、「忙しくて時間が取れない」「どんなテーマで書けばいいのか分からない」といった声も聞かれます。

まず時間については、仕事を終えた後や休日など余裕のある時に、自分のライフスタイルに応じた集中しやすいタイミングで行いましょう。特におすすめなのは、就寝前など心身ともにリラックスできる時間です。精神的に落ち着いた状態で行うことで、より一層、書くことに集中しやすくなります。

制限時間も、自分にとって無理のない範囲で構いません。まずは5分を基本として始めてみましょう。

日記を書くように毎日行うのも方法の一つですが、大切なことは「毎日必ず書く」ことよりも週に1回でも良いので習慣化し、長く継続することです。

習慣化するうえで、書くテーマを固定するのも効果的です。例えば、「感謝したこと」「自分が他者のために行った親切」「感謝と親切から浮かんだ気付き」と3つのテーマを決め、毎日行うなら「今日感謝したこと」「今日行った親切」「今日の気付き」について書いていきます。

週に1回の場合は、「今週感謝したこと」「今週行った親切」「今週の気付き」というように同様に書いていきましょう。毎月、月末ごとに同じテーマで振り返りをするのもおすすめです。日や週、月を重ねるごとに、自分の感情や行動パターン、自分自身の内面がどのように変化していくのかといったことを、客観的に把握しやすくなります。

テーマとしては、自分に関係がないものよりも、自分の内面を掘り下げることができるような「自分への質問」を考えてみるのも良いと思います。

ジャーナリングテーマの一例をご紹介します。

  • ずっと大切にしてきて、これからも大切にし続けたいこと
  • 私を支えてくれるモノやコト
  • 私の理想の働き方
  • 有意義だったと感じる時間と、無駄にしたと感じる時間、その差は何?
  • 今日何か一つ手放すとしたら何にする?それを手放すとどうなる?
  • 私が心から恐れていることは…
出典:『マインドフルネスダイアリー 2021』一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュートプロデュース/ディスカヴァー・トゥエンティワン

例えば、「私が本当に大切にしていることは」というテーマに対して、「健康」「家族」「友人」など羅列していくと、自分が無意識に思っていることを言語化でき、気持ちが整理されます。

じっくり考えてから書くよりも、先に手を動かして思いのままに書くことで「今、この瞬間」に集中する力は高まります。頭に思い浮かぶことを書き続けることで、自分の考えや気持ちが紙の上で可視化され、さまざまな気付きが得られます。気付きによって「次はこうしよう」というアクションが生まれてきます。

是非ジャーナリングを行って自分の今の気持ちを整理し、次なる一歩へとつなげていきましょう。

荻野 淳也 一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事

慶応義塾大学卒業後、外資系コンサルタントやベンチャー企業取締役などを経て、リーダーシップ開発や組織開発のコンサルティング、エグゼクティブコーチングなどに従事。グーグルで開発されたSEARCH INSIDE YOURSELF(SIY) の認定講師。多摩大学大学院M B A客員教授。

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