健康マメ知識
2022.01.14

クイズ・これってホントに健康?

~日常の中の「健康に関する疑問」を検証!~
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「ノンアルコール飲料なら健康的」「野菜ジュースを飲めば野菜不足は解消」「1日10,000歩は歩くべき」など、健康に良いと思われていることは、本当に正しいのでしょうか?健康に関する、よくある疑問について、クイズ形式で紹介します。産業医・内科医の森勇磨先生にお話を伺いました。

電子タバコやノンアルコール飲料は、
本当に健康への悪影響がないの?

電子タバコやノンアルコール飲料は、本当に健康への悪影響がないの?
  • Q.電子タバコ・加熱式タバコは、紙巻きタバコに比べて健康への悪影響が少ない?
  • A.まだ研究中で、安全性は明らかになっていません。

タバコの葉を使わずカートリッジ内の液体を加熱して蒸気を吸引する電子タバコや、タバコの葉を加熱して発生した蒸気を吸引する加熱式タバコは、紙巻きタバコに比べてニコチンの量を減らして作られています。約1,000人の喫煙者を対象とした海外の研究では、「半年間、紙巻きタバコを加熱式タバコに替えた場合、善玉コレステロールの数値が改善した」というデータもあります。しかし、電子タバコと加熱タバコの安全性については研究中で、明らかになっていません。電子タバコについては、まだ長期的なデータは出ていないものの、重度の肺炎を発症した例が確認されています。

喫煙が健康に悪影響を与えることは間違いありません。電子タバコ・加熱式タバコが紙巻きタバコに比べて悪影響が少ないかどうか、今後の研究がまたれるところです。

  • Q.ノンアルコール飲料は体に良い?
  • A.アルコールの害は避けられますが、体に良いというわけではありません。

アルコールを摂取すると、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、乳がん、(男性の場合)大腸がんのリスクが高まることが報告されています。ノンアルコール飲料の場合、アルコールの摂取を控えることができるため、普段アルコールを飲んでいる人が休肝日の代替としてノンアルコール飲料を利用するのは、一つの選択肢となります。一方で、ノンアルコール飲料には糖分や添加物(人工甘味料など)が含まれていることがあり、糖分の摂りすぎなど別の問題もあるため、体に良いというわけではありません。

コーヒー、お茶、野菜ジュース……
健康に良い飲み物は?

コーヒー、お茶、野菜ジュース……健康に良い飲み物は?
  • Q.コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶、どれが体に良い?
  • A.どれも、それぞれに健康効果が期待できます。

コーヒーは、「糖尿病のリスクを下げる」「死亡率を15%前後下げる」「肝臓がんや子宮がんのリスクを下げる可能性がある」といった報告があります。飲みすぎると胃に負担がかかったり眠れなくなったりしますが、砂糖を入れずに1日3~5杯程度飲むのであれば体に良い飲み物と言えます。

紅茶、緑茶、ウーロン茶は、発酵度が違うだけで、どれも「カメリアシネンシス」という茶の木からできています。抗酸化作用があると言われるポリフェノールの一種、カテキン成分を多く含んでおり、糖尿病の指標であるHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)や悪玉コレステロールを低下させるなど、さまざまな健康効果がデータで示されています。毎日の食習慣に取り入れると良いでしょう。

  • Q.野菜ジュースは野菜の代わりになる?
  • A.ジュースにすることで失われる成分があるため、代わりにはなりません。

野菜をジュースにする過程で食物繊維などが失われるため、野菜ジュースでは野菜そのものの健康メリットを享受できません。ビタミンやミネラルなどの栄養素は摂取できますが、ジュースを飲んでいる人と飲んでいない人を比較する統計データでは、健康状態はあまり変わらないという結果が示されています。一方、野菜そのものを摂取した場合は、明らかに死亡率が下がるというデータがあります。ジュースよりも野菜そのものを摂取することを心掛けましょう。

  • Q.疲れたときはエナジードリンクを飲めば良い?
  • A.習慣的に、たくさん飲むのは危険です。

「毎日昼食後の眠気覚ましにエナジードリンクを飲む」「健康に効くイメージがあるので1日に何本も飲む」といった習慣は非常に危険です。エナジードリンクには砂糖が多く含まれており、糖尿病や肥満のもとになります。実際に、毎日エナジードリンクを飲んで、糖尿病を悪化させた患者もいます。また、カフェインが多く含まれる製品もあります。砂糖やカフェインには依存性があると言われ、無意識のうちに習慣化してしまいがちです。「エナジードリンクを飲むことで集中力や記憶力のアップに繋がった」という研究結果もあり、飲んではいけないわけではありませんが、「ここぞというときの飲み物だ」と認識しておきましょう。

  • Q.健康のために、水はたくさん飲む方が良い?
  • A.脱水には注意が必要ですが、意図的にたくさん飲む必要はないでしょう。

「たくさん水を飲めば老廃物が出る」といったデトックス効果には、医学的な根拠はありません。もちろん、真夏などの脱水には注意が必要ですが、人間の体は、水分が多すぎれば尿として排泄し、不足すれば喉が渇いて水分補給をするよう、腎臓が体内の水分量を一定に保つ役割を果たしていますので、意図的にたくさん飲む必要はありません。食事からも水分を補給できるため、量についてはあまり意識しなくて良いでしょう。

気になるダイエット、
健康に良い食材は?

気になるダイエット、健康に良い食材は?
  • Q.太っているよりも、痩せている方が健康?
  • A.太りすぎも痩せすぎも、健康には悪影響です。

医学的には、身長と体重の関係から算出される体格指数(BMI:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算)が国際的な指標として用いられています。25以上が肥満、18.5未満が痩せ(低体重)とされています。米国での研究では、BMI22.5~25を基準としたときに、これを上回る場合も下回る場合も、死亡率が上がりました。太りすぎだけでなく、痩せすぎも健康には良くないということです。日本人の理想はBMI20~25とされていますので、この範囲に収まっていれば、健康のためにさらに痩せようとする必要はありません。

なお、BMIは身長と体重の比率なので、脂肪量や筋肉量が反映されていないことには注意が必要です。体重ばかりを気にするのではなく、筋トレを含めた適度な運動で筋肉量を落とさないようにすることも大切です。

  • Q.太らないために油はできるだけ摂取しない方がいい?
  • A.油の種類によって、摂るべきものと避けるべきものがあります。

オリーブオイルや、オメガ3脂肪酸と呼ばれる不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸[DHA]・エイコサペンタエン酸[EPA]などの魚の油、エゴマ油、アマニ油など)は、動脈硬化を抑える作用があり、体に良いことが証明されていますので、ぜひ摂りたい油です。

一方、トランス脂肪酸と呼ばれる人工的に作られた油は、避けたい油です。トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニング、これらを使った菓子類や揚げ物などに含まれています。継続的に摂取することで、悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少したというデータがあります。心臓病のリスクが上がる、糖尿病になりやすくなる、認知症になりやすくなるといった研究結果もあります。また、動物性脂肪も、摂りすぎると動脈硬化が促進されるため、避けるべき油の一つです。

  • Q.脂肪分の少ない赤身肉はたくさん食べると良い?
  • A.脂肪分が少なくても、食べすぎには注意が必要です。

肉の脂肪は動物性脂肪ですので、赤身の部分は脂肪が少ないという点では良いですが、赤身肉(牛肉・豚肉など見た目が赤い肉)の摂取量が1日65g増えるごとに、子宮がん、肺がん、食道がん、大腸がん、糖尿病といった病気のリスクが上がるという研究結果が出ています。赤身肉を食べてはいけないということではありませんが、赤身肉ばかりではなく、他のたんぱく源もバランス良く摂取すると良いでしょう。

肉類の中でも、鶏肉(白身肉)はデメリットが証明されていないため、鶏肉を中心に豚肉、牛肉を加えていく方が健康的と言えます。また、肉と魚を比べれば、オメガ3脂肪酸が摂取できる魚の方がおすすめです。

健康な体づくりのために
必要なことは?

健康な体づくりのために必要なことは?
  • Q.筋トレなどの運動をするとき、プロテインをたっぷり摂ると体に悪い?
  • A.健康な人であれば、極端な大量摂取でない限りは問題ありません。

プロテインは、体を作る原料となるたんぱく質のことです。効率良く良質な筋肉をつけたい人がプロテインを摂取することは問題ありません。適度な筋肉量を保つことは、糖尿病の予防・改善など健康維持のためにも非常に重要です。プロテインドリンクなどを摂取すれば手軽ですが、鶏肉のささみなど高たんぱくな食品を摂ることでも同じ目的は果たせます。

「プロテインを大量に摂ると腎臓に悪いのではないか」という心配する声も聞かれます。たんぱく質を体重1kgあたり1gと2gそれぞれ摂取した人を比較した研究では、腎臓の機能は変わらなかったというデータがあります。慢性腎不全などの疾患がない健康な人であれば、極端な量を摂らない限りは心配しなくて良いでしょう。

  • Q.ウォーキングで健康効果を上げるには、1日10,000歩以上歩くべき?
  • A.歩数の目安は8,000歩でOKです。早歩きを心掛けましょう。

「8,000歩までは、歩けば歩くほど寿命が延びた」という海外の研究結果がありますが、8,000歩を超えてからは大きな違いがありませんでした。健康効果の面では、無理に10,000歩を目指す必要はないと言えます。

ウォーキングの際には、隣の人とギリギリ会話ができないくらいのやや早歩きで歩くと、運動強度が上がり、健康効果が期待できます。ときには、筋力トレーニングの要素を意識して大股で踏み込む歩き方にするなど、バリエーションを増やすと、楽しんで続けられるでしょう。

  • Q.紫外線は徹底的に対策して極力浴びないようにする方が良い?
  • A.ビタミンD不足を避けるためにも、1日15~30分程度は日光を浴びましょう。

紫外線は、浴びすぎると皮膚がんの原因になるなど悪いイメージがありますが、全く浴びないのも、ビタミンD不足から骨粗しょう症に繋がるなどのリスクがあります。日光を浴びると紫外線と皮膚で反応が起こり、ビタミンDが作られます。1日15〜30分を目安に日光を浴びるようにしましょう。なお、紫外線はガラスを通過しないので、ガラス越しに浴びても効果がありません。また、秋から冬は日照時間が少なくなるため、より積極的に外に出て、日光を浴びるよう心掛けましょう。

森 勇磨 産業医・内科医/Preventive Room株式会社代表

神戸大学医学部医学科卒業。研修後、年間約1万台の救急車を受け入れる藤田医科大学病院救急総合内科で勤務。株式会社リコーの専属産業医として予防医学の実践を経験後、独立。Preventive Room株式会社を立ち上げ、予防医学のさらなる普及を目指している。2020 年2月より「すべての人に正しい予防医学を」という理念のもと、YouTubeチャンネル「予防医学ch /医師監修」をスタート。著書に『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』(ダイヤモンド社)がある。

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