食で健康
2019.11.22

食物繊維がしっかり摂れるもち麦パワーに注目!

~腸内環境を整え、血糖値の上昇を抑える~
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健康管理やダイエットのために、ご飯やパンなどの主食(糖質)を減らすことがありますが、主食を減らすと、食物繊維が不足するなど腸内環境の悪化につながる可能性があります。そんな食物繊維不足を効果的に補うために役立つのが「大麦」です。大麦の健康効果や摂り入れ方について、松生クリニック院長の松生恒夫先生に伺いました。

大麦の種類と特徴

大麦は、イネ科の越年草えつねんそうで、米、小麦、トウモロコシに次いで世界で生産量第4位の作物です。日本でも明治時代から昭和40年ごろまで、主食として麦ご飯が親しまれていました。精白米が普及して、主食用としての大麦の摂取量は減少していきましたが、最近、その健康効果が明らかになり、見直されてきています。

大麦は「二条種」と「六条種」に分かれており、二条種は主にビールなどの醸造用に、六条種は麦ご飯や麦茶などに使われます。また、白米と同じように「うるち性」と「もち性」の違いもあり、粘り気が強くモチモチとした食感の「もち麦」も注目されています。最近は、より美味しく食べやすいように改良された、さまざまなタイプの大麦製品が販売されています(表)。

■大麦製品の種類と特徴 大麦製品の種類と特徴

生活習慣病の予防にも!
さまざまな健康効果とは

大麦には、多くの食物繊維が含まれています。食物繊維は、腸を刺激して動きを活発にするなど腸の健康に欠かせない働きがあり、日本人に不足している成分です。食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維がありますが、大麦にはどちらも多く含まれ、かつ「β−グルカン」という水溶性食物繊維が、白米の約25倍、玄米の約4倍も含まれています。

大麦は、さまざまな生活習慣病予防に大変貴重な役割を果たすことが明らかにされており、血糖値の上昇を抑える、血中総コレステロール値を下げる、血圧を下げるなど、さまざまな効果があることが分かっています。また、消化管にも作用して、腸内では善玉菌の栄養源となることで腸内環境が整えられ、便通改善にもつながります。
特に水溶性食物繊維が多く含まれているスーパー大麦は、調理の必要がなく手軽に摂れるためおススメです。

血糖値を抑える作用が続く
セカンドミール効果

β−グルカンなどの水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状になって膨らみ、食べ物を包み込みます。これにより、以下のような効果があります。

・食べ物が胃や腸で消化されにくく、長時間かけてゆっくりと通過するため、糖質や脂質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を抑えます。

・余分なコレステロールや有害物質を吸着して体外へ排出します。

・短鎖脂肪酸※の増加により、血糖値を抑えるホルモン(GLP-1)や、食欲を調整するホルモン(PYY)が分泌され、食後血糖値を上がりにくくする効果が期待できます。

※短鎖脂肪酸:大腸内で腸内細菌によって作られる酸(有機酸)の一種。酢酸、プロピオン酸、酪酸などの種類がある。

また、大麦を食べることで食べ物が消化吸収される時間が長くなり、次の食事の食後血糖値まで上がりにくくする効果も期待できます。これを「セカンドミール効果」と言います。食後の高血糖を起こしにくくなり、血糖値を下げるインスリンというホルモンの過剰な分泌も抑えられるため、太りにくい状態を長時間キープできます。朝食に大麦を食べると、昼食後の血糖値の上昇や、昼食・夕食の糖質吸収を抑えられ、セカンドミール効果を “より”活かすことができます。

食物繊維が豊富な
もち麦を取り入れよう!

現在、日本人の1日の食物繊維の摂取目標量は、成人男性20g以上、成人女性18g以上ですが、実際の平均摂取量は約15g(平成29年度国民健康・栄養調査)と不足しています。特に、穀類からの食物繊維摂取が減っています。炭水化物を極端に減らすと、食物繊維だけでなくビタミン、ミネラルの不足も招く可能性がありますし、腸の健康を損なうリスクもあります。炭水化物の中でも食物繊維が豊富な大麦(もち麦)は、ごはん一杯(150g)でおよそ2.9gの食物繊維が摂れます。

そこで、最近、スーパーやコンビニエンスストアなどで見かけるようになったもち麦を、食生活に取り入れる例をご紹介します。

●もち麦ご飯

主食のご飯をもち麦に置き換えるのが、取り入れやすい方法です。
米1合、もち麦1/2合に対して、水は米を炊く分の水+もち麦分の水150ml
を入れて炊きます。

●ゆでもち麦

ゆでたもち麦は、サラダや汁物など幅広い料理に使いやすく、ストックしておくと便利です。
もち麦150gと水600mlを鍋に入れて15〜20分浸した後、中火にかけます。沸騰後、弱火にして約20分加熱し、火を止めて蓋をしたまま10〜15分蒸らします。

●野菜の味噌汁

野菜に出汁を加えて加熱し、沸騰後、ゆでもち麦を加えて3〜5分煮ます。味噌で味を調えます。

●納豆オリーブオイルもち麦 

ゆでもち麦と納豆を付属のタレで和え、お好みでオリーブオイルをかけます。

加熱された状態でそのまま使える大麦製品も市販されていますので、味噌汁やカップ麺など、普段の食事に加えるだけで手軽に大麦を摂ることもできます。
毎日の食生活に、上手に大麦を取り入れ、健康管理に役立てましょう。

松生恒夫さん 松生クリニック院長

1980年東京慈恵会医科大学卒業。1983年東京慈恵会医科大学第三病院内科助手
1994年松島病院大腸肛門病センター診療部長などを経て2003年松生クリニックを開業。これまで4万人以上の大腸内視鏡検査を行い、便秘外来の専門医でもある『健康長寿力を引き出すオリーブオイル納豆』(ユサブル)、『日々、腸生活』(総合法令出版)、『もち麦で腸イキイキ革命』(日本文芸社)など著書多数。