健康マメ知識
2022.06.10

長引く不調の原因は、天気のせいかも!?

~気圧の変化が影響する“気象病”とは~
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雨降りの前後は何となく体調が悪くなる…。原因が分からないまま抱え続けている心身の不調には、天気が影響している可能性があります。「気のせい」で済ませるのではなく、「気象病」かもしれないと考えてみることが、改善への一歩です。気象病や天気痛研究の第一人者として知られる佐藤純先生にお話を伺いました。

その不調は気象病かも?
まずはチェックを!

まず自分の体と心の状態について、下記から該当する項目をチェックしてみましょう。

Check1 

  • 頭痛持ちである
  • 首や肩がよく凝る
  • 膝や腰に痛みがある
  • 立ちくらみやめまいが起こりやすい
  • 耳鳴りがすることがある
  • 以前ケガしたところがときどき痛くなる
  • 手や足に関節痛がある
  • 理由もなく憂鬱(ゆううつ)感や不安感に襲われることがある
  • 気持ちが落ち込み、やる気が起きない
  • よくお腹がゆるくなる
  • 更年期障害の症状がある

次に、Check1の不調が表れる、もしくは症状が悪化するタイミングをチェックしてみましょう。

Check2 

  • 天気が崩れる2、3日前
  • 天気が崩れ始めたとき
  • 天気が回復してくるとき
  • 雨の日
  • 春になって暖かくなるとき
  • 梅雨になってじめじめしてくるとき
  • 冬になって寒くなるとき
チェック項目作成/佐藤純先生
出典/『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)


Check1で該当した症状が、Check2のいずれかのタイミングで発生していたら、不調の要因の一つとして「気象病」の可能性が考えられます。

気象病とは、天気の変化に伴うさまざまな不調の総称です。Check1で挙げたように、頭痛やめまい、首や肩のこり、腰痛、関節痛、むくみ、耳鳴り、だるさ、気分の落ち込みなど症状は多岐にわたります。

その中で痛みを伴う症状のことを「天気痛」と呼んでいます。症状や痛みの強さなどには個人差がありますが、特に多く見られる症状として頭痛と首や肩のこりが挙げられます。

天気が悪い日

気象病の大きな要因は
気圧・気温・湿度の変化

天気には日照時間や降水量、風速などさまざまな要素がありますが、心身に大きな影響を与えるものとして次の3つが挙げられます。

  • 1.気圧
    天気が崩れるときに、めまいや倦怠(けんたい)感、眠気などの症状が表れ、その後に頭痛などの痛みが生じることが多い。反対に、天気が回復に向かうときに体調が悪くなる場合もある。
  • 2.気温
    寒暖差によって不調が生じやすくなる。暖かくなると片頭痛、寒くなると肩こりや緊張型頭痛などが悪化しやすい傾向にある。
  • 3.湿度
    湿度が高い梅雨時などに不調が起こりやすい。特に関節リウマチは湿度の影響を受けやすいと言われている。

気象病のメカニズムについてはまだ完全には明らかになっていませんが、特に気圧の変化が気象病と密接に関わっていることが分かってきています。

気温や湿度とは違って、気圧の変化は自分の体では感じにくいものです。しかし、私たちの耳の奥にあり、体の平衡感覚を(つかさど)る「内耳」は、気圧の変化を感じ取っています。

内耳が急激な気圧の変化を感じると、自律神経のバランスが乱れやすくなります。血管を収縮したり、筋肉の緊張を高めたりする作用を持つ交感神経が優位になることで、痛みなどの症状に繋がると考えられます。

一方で、気温や湿度を感じるセンサー(受容体)は主に皮膚や粘膜にあるほか、中枢神経や内臓にも存在しています。

温度や湿度の変化をセンサー(受容体)がとらえると電気信号に変化され、末梢(まっしょう)神経を伝わって、脳や脊髄(せきずい)の中枢神経へと到達します。この際に脳へ伝わる情報によって自律神経のバランスが乱れ、不調の要因になると考えられます。

1カ月間、日誌をつけて
不調と天気の関係を知ろう

台風の前後など大きな天気の変化がある時は、心身への影響を多少でも感じる方もいることでしょう。

しかし、自分ではほとんど意識しないような小さな天気の変化でも、知らず知らずのうちに心身が影響を受けている場合があります。

「はっきりとした病気というわけではないけれど、何となく体調の悪さが続いている」「冒頭のチェックで、体の不調に天気の影響がある可能性に気づいた」という場合には、ぜひ「日誌」をつけて、天気の変化と体調の関係を客観的に把握してみましょう。

日誌には次の6つを記録しましょう。

  • 1.日付
  • 2.天気予報
  • 3.実際の天気
  • 4.気圧(気圧アプリ、気象庁のデータなどで調べることができます)
  • 5.痛みや不調を感じた場所
  • 6.痛みの強さ(度合い)

さらに「薬を飲んだ」「運動をした」といったメモや、「睡眠時間は十分なのに眠気がひどい」「頭がぼんやりして集中できない」といった体の変化なども記録しておくと良いでしょう。

こうした記録を1カ月ほど続けると、天気と不調の関係性が明らかになり、「自分はどんな時に体調が悪くなりやすいのか」という傾向をつかみやすくなります。

原因が分からないまま体調不良を抱え続けていると「自己管理能力が低いから」と自分を責めてしまったり、周囲の理解を得られず不安や孤独に陥ったりするケースも見られますが、日誌をつけることで「天気の影響だった」と原因が分かると、それだけで気持ちが楽になる場合もあります。

簡単なセルフケアで
症状を和らげよう

日誌をつけると、自分が体調を崩しやすいタイミングも見えてきます。事前に対策をとることで、症状の緩和や予防につなげることが期待できます。

■【気圧】の影響を受けやすい場合

「くるくる耳マッサージ」で内耳の血行を良くすることで、気圧を感じるセンサーの過敏な反応が抑えられ、耳鳴りやめまい、片頭痛などの症状を和らげることができます。

【気圧】の影響を受けやすい場合の対策
■【気温】の影響を受けやすい場合

軽めのストレッチなど、体を動かすことを習慣にすることで自律神経が整いやすくなり、症状の緩和や予防につながります。

「テニスボールで首すじほぐし」は首や肩のこりなど筋肉性の痛みを和らげるうえでも効果的です。

【気温】の影響を受けやすい場合の対策

※痛みを感じる場合はテニスボールより軟らかいボールを使用しましょう。首の前後は圧迫しないよう注意。

■【湿度】の影響を受けやすい場合

梅雨など湿度が高くなる季節に入る前に、汗をかく習慣をつけることが大切です。汗をかいて体から熱を逃がすことで、不調の予防につながります。

1日15~20分程度のジョギングを2週間続ける、運動が難しい場合はぬるめのお風呂に15~20分浸かりながらゆっくり体を温める、といった方法が特に効果的です。

以上は簡単にできるセルフケアの一部です。

痛みがひどい場合は市販の鎮痛薬を服用するのも方法の一つですが、過度に服用しないよう注意が必要です。

仕事や日常生活に支障をきたすほどの頭痛がある場合は、できるだけ早く頭痛外来や脳神経内科、ペインクリニックなどを受診しましょう。処方箋や痛み日記を記録するなどの治療を行うことで改善されます。

また、気象病の診療を行う医療機関も徐々に増えてきています。天気の変化による不調に悩んでいる場合は、できるだけ早めに医師に相談するのがおすすめです。

佐藤 純 天気痛ドクター®

医学博士、日本慢性疼痛(とうつう)学会認定専門医。中部大学大学院教授、愛知医科大学客員教授。1983年、東海大学医学部卒業後、疼痛医学、環境生理学の研究をスタート。名古屋大学教授を経て、2005年から愛知医科大学病院・いたみセンターで「天気痛・気象病外来」を開設。東京竹橋クリニックでも気象病・天気痛外来医として診療を手がける。『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)など著書多数。また、アクセサリー感覚で使用できる「天気痛耳せん」を販売する。

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