健康ライフ
2019.10.25

つらい症状は女性ホルモンの影響?!

~女性に多い病気と対処法~
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女性の体や心は、一生を通じて2つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)に大きな影響を受けます。これらの女性ホルモンは年齢とともに分泌量が増減し、それに伴い、さまざまな体調の変化が起こりやすくなります。女性ホルモンの働きを知り、上手に付き合っていくためにはどうしたら良いのか、年代ごとに気になる不調への対処法について、いけした女性クリニック銀座院長の池下育子先生に伺いました。

一生を通じて女性の体に影響を与える
2つの女性ホルモン

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。2つの女性ホルモンがバランス良く分泌されると、女性の体は健やかに整います。

  • エストロゲン(卵胞ホルモン)
    「女性を輝かせる幸せホルモン」とも呼ばれるエストロゲンは、乳房を発達させ、肌や髪を艶やかにするなど、女性らしい丸みをおびた体を作る働きがあります。さらに、子宮内膜を厚くして、妊娠しやすい状態を作ります。恋愛中のドキドキ感などでも分泌が促され、自律神経を安定させる、骨を丈夫にする、脳の働きを活発にするなど健康に密接に関わっています。
  • プロゲステロン(黄体ホルモン)
    排卵の起こるタイミングで多く分泌され、子宮内膜を柔らかくして「受精卵のベッド」を作る働きがあります。卵子が受精しなかった場合は、プロゲステロンが急減し、不要な子宮内膜が剥がれて、体外に排出されます(月経)。

これらの女性ホルモンの分泌量は、卵巣機能の成熟度によって大きく増減します。初潮を迎えた思春期のころから急激に分泌量が増え、20代半ばごろのエストロゲンの分泌がピークを迎え、妊娠と出産に最も適した状態に体を整えます。35歳を過ぎるころから卵巣機能の衰えに伴って分泌が減り始め、45歳ごろから急激に減少します。このことから、ライフステージごとにさまざまな体調の変化が起こりやすくなります。

■女性ホルモン分泌量の変化 女性ホルモン分泌量の変化

月経の悩み
月経時の不調はどうして起こるの?

初潮を迎えた後の女性は、妊娠に備えて子宮の状態を整えながら排卵期を迎え、妊娠しなかったときには、不要な子宮内膜を体外に排出します。これが月経(生理)です。月経から次の月経までの平均的な周期は28日ですが、25〜38日程度なら正常の範囲と言えます。

■女性ホルモンと基礎体温の推移 女性ホルモンと基礎体温の推移

排卵と月経のタイミングに応じて女性ホルモンは増減し、女性の体と心に影響を与えます。月経間際に感じるイライラや憂うつ、頭痛などの体調不良はPMS(月経前症候群)と呼ばれ、2つの女性ホルモン量の増減などが原因で現れる症状です。

過度なダイエットやストレスフルな生活は女性ホルモンの分泌を乱し、無月経などの原因にもなります。月経時の不調は体からのSOSであることも多いので、症状が重いときには婦人科を受診しましょう。

日常的に基礎体温を測って周期を把握しておくと、女性ホルモンの変化のリズムが予測できます。排卵の有無、妊娠しやすい時期(排卵期)、妊娠の有無、PMS の時期、生理日などが把握しやすくなるので、体調の変化に対して事前に心構えができるようになります。

女性ホルモンとの付き合い方1
10~30代のPMS対策

PMSは、月経開始の3~10日前から始まる精神的あるいは身体的症状です。イライラして怒りっぽくなったり、頭痛や腹痛などで起き上がれなくなったりと、PMSによる不快な症状に悩まされるのはつらいことです。
日常の中で簡単にできるPMS対策をご紹介します。
※症状に個人差があるため、つらいときには我慢せずに婦人科の受診をお勧めします。

<運動編>
ホルモンバランスの変化により、自律神経が乱れ血行が悪くなることが原因で、頭痛や肩こり、腰痛などの症状が出やすくなります。体を意識して動かしたり、お風呂で温めたりすることで血行が良くなり、PMSの症状がやわらぎます。

  • ヨガや軽いストレッチ
    ゆったりと呼吸しながら、筋肉のこわばりをほぐすことで、血流の滞りが改善されます。
  • 有酸素運動(ジョギング、水泳、エアロビクスなど)
    適度な運動で気持ち良く汗をかけば、スッキリした気分になります。緊張がとれ、ストレス解消にも役立ちます。
  • ぬるめのお風呂で体を温めてリラックス
    就寝の1~2時間前までに入浴しましょう。副交感神経が刺激され、高ぶった神経を鎮めてくれます。
  • ホットタオルで手軽に温熱ケア
    手軽に体を温めたいなら、ホットタオルでの温熱ケアも有効です。
    ホットタオルは、水に濡らしたタオルを絞り、電子レンジで1~2分ほど加熱すると簡単にできます(やけどには十分注意してください)。
    首の後ろを覆うようにホットタオルを首にかけ、首から肩にかけて10分ほど温めながらリラックスします。
    首を温めることで、太い血管を伝って熱が効率的に全身に行き渡るほか、肩のこわばりもほぐれやすくなります。
女性ホルモンと基礎体温の推移

※PMSで、ほてりなどが強い方は、ぬるめに温めたタオルで目の周りを温める程度に抑えましょう。

<食事編>
血糖値が大きく変動すると、PMSの誘因になります。食事の間隔を空けすぎず、PMS改善に効果的な食材を積極的に取り入れましょう。間食には、ヨーグルト、バナナ、ナッツ、ドライフルーツなどがお薦めです。

■PMS改善のために取り入れたい食材 PMS改善のために取り入れたい食材
更年期障害の悩み
心や体に不調を感じたら早めに受診を

閉経前後の約10年間を更年期と呼び、日本人女性の場合は平均して45~55歳くらいの方が該当します。この時期は、卵巣機能の低下によりホルモンバランスが大きく乱れ、心と体が変化についていけず、不調が起こりやすくなります。これを「更年期障害」と呼びます。

更年期障害の症状は、人によってさまざまです。本人の性格やストレス、生活習慣の乱れなども関連します。

病気が潜んでいる可能性も考えて、不調に応じた診察を受診することをお勧めします。特に原因が見つからず、つらい症状にお悩みの場合は、更年期症状のチェックリストを参考にして、婦人科や更年期外来、女性外来などを受診して相談してみましょう。

■更年期症状のチェックリスト 更年期症状のチェックリスト 更年期症状のチェックリスト
女性ホルモンとの付き合い方2
40代以降の更年期対策

更年期障害による不調は、体に表れる場合と心に表れる場合があり、その症状には個人差があります。
血行を良くする運動を続けたり、食事に気を付けたり、ゆったりリラックスしたりすることで、症状がやわらぐこともあります。

  • 30分程度の有酸素運動
    運動不足は腰痛や骨粗しょう症にも悪影響を与えます。軽めのウォーキング、ヨガ、ストレッチなどで体を動かしましょう。家の中でラジオ体操をしたり、肩をぐるぐると回したりするだけでも、筋肉がほぐれて楽になります。
  • 冷えを予防
    顔は熱いのに手足は冷たい「冷えのぼせ」がある人は、足湯、半身浴で体を温めましょう。
    マッサージも効果的です。体を締め付けるような服や下着は、血行を悪くしてしまい、冷えにつながることがあります。
  • ”まごわやさしい”がお薦め
    積極的に取りたい食材を「ま(豆)ご(ゴマ)わ(わかめなどの海藻類)や(野菜)さ(魚)し(椎茸などのきのこ類)い(芋)」と語呂合わせで覚え、バランスの取れた食事を意識しましょう。特に「大豆」は、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンのほか、カルシウムや食物繊維も豊富な食材です。普段の食事に上手に取り入れましょう。
  • 質の高い睡眠
    更年期には、体を緊張させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経のバランスが乱れやすくなります。そのため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることもあります。
    寝室の室温は24~26℃、湿度は50%前後を目安とすると良いでしょう。部屋の明るさは月明かり程度が眠りやすいとされています。また、自分の好きなアロマを香らせると、リラックス効果で入眠しやすくなります。

体の変化に賢く対処するために、女性ホルモンの仕組みと働きを知り、上手に付き合うようにしましょう。

池下 育子 いけした女性クリニック銀座 院長

帝京大学医学部卒業後、帝京大学麻酔学教室助手として勤務。国立小児病院麻酔科を経て、東京都立築地産院産婦人科へ。1991年、同産院院長に就任。92年に現クリニックを開業。
著書に『女性の病気百科 気になる体の悩みや症状がわかる』(主婦の友社)、『ラブ&セーフティ・セックス 愛するふたり』(日東書院)、『Maternity Book ママになるまでの10ヵ月ダイアリー』(梧桐書院)など。

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