健康ライフ
2021.01.15

意外と知らない!? 健診結果の見方と活かし方

~体の状態を知り、病気予防に活かそう~
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「人生100年時代」が謳われる今、病気は「治療するもの」から「予防するもの」と考えられるようになっています。健康であり続けるためには、「特に症状はない」「まだ若い」と思っても、年に一度、健康診断を受診することが大切です。健康診断の結果からどのようなことが分かるのか、その後の健康づくりにどう活用すれば良いのかを、東京慈恵会医科大学大学院の和田高士教授に伺いました。

「健診」の主な目的は
将来の発症リスクの確認

体の異常には、かぜや脳卒中などのように自覚症状が出やすいものと、高血圧症などのように自覚症状が出にくいものがあります。自覚症状が出にくい異常や病気は、検査をしなければ発見できません。「健康診断(以下、健診)」は、検査によって臓器の働きをチェックすることにより、自覚症状の乏しい異常を発見したり、将来、病気になるリスクを確認したりすることを目的に行われます。
公的医療保険(健康保険、共済組合、国民健康保険)に加入している人とその家族は、基本的に年に1回、健診を受ける機会が提供されます。このうち、会社員が受ける定期健診(職域健診)と40〜74歳の人が受ける特定健診(通称、メタボ健診)、特定の年齢の人を対象にしたがん検診については、検査項目が国によって規定されています。
「健診」の目的は、血圧測定による高血圧や血液検査による糖尿病など、将来の重大な病気の発症に強く影響するリスクが生じているかを確認することです。
また、超音波検査や内視鏡検査によって、がんの有無をチェックするなど、特定の病気を発見することを目的にした検査は「検診」と呼ばれます。検査項目の多い人間ドックは「健診」+「検診」で構成されており、定期健診にも任意の「検査」が追加される場合があります。

■健診の主な検査内容 ■健診の主な検査内容

健診結果の数値と判定区分は
こうチェックする

健診の検査結果では、検査項目ごとに「検査値」と「判定」が示されます。判定は、日本人間ドック学会による、表2の5段階の区分が一般的です。判定が「C」「D」の項目がある場合は、再検査や精密検査を受けること、食事や運動の指導を受けて、生活習慣の改善を図ることが必要になります。
再検査と精密検査には健康保険が適用され、受診する医療機関は自分で選択することができます。精密検査は、内容によって受けられる医療機関が限られるので、健診を受けた医療機関に相談し、該当する医療機関を紹介してもらうと良いでしょう。

■健診結果の判定区分 ■健診結果の判定区分

健診では病気発症のリスクを評価するため、血圧、血糖値、中性脂肪、LDLコレステロール、尿酸など、生活習慣病に関係するいくつかの項目については、各専門学会が疫学的な観点から定義した「予防医学的閾値(いきち)」が判定「A」の基準範囲(基準値)に採用されています。この値を超えると将来重大な病気、例えば脳卒中や心筋梗塞になりやすくなることを意味します。例えば血圧の場合は、収縮期(最高)血圧130mHgが予防医学的閾値でこの値未満がA判定となります。

では、脂質代謝検査の検査結果例とそこから分かる内容(疑われる病気や病気以外の要因)を見てみましょう。

■検査結果の例(脂質代謝検査) ■検査結果の例(脂質代謝検査)
■検査結果の例(脂質代謝検査) ■検査結果の例(脂質代謝検査)

健診で見つからない異常やリスクもある
大切なのは日頃の健康づくり

健診は総合的に健康状態をチェックしますが、がんをはじめ、健診だけでは発見できない体の異常やリスクもあります。がんの発症率は一般的に高齢になるほど高くなるものの、乳がん・子宮頸がんは近年、20~30代で発症するケースが増えています。厚生労働省の推奨では、乳がん検診は40歳から、子宮頸がん検診は20歳からとなっていますが、20~30代のうちから両方の検診を定期的に受診することをお勧めします。
また、「人生100年時代」と言われるように平均寿命が延びている一方で、介護を必要とする期間も延びるなど、平均寿命と健康寿命の差の拡大が懸念されています。健康寿命を左右するサルコペニア※1やロコモティブシンドローム※2は、筋肉量の減少などが原因ですが、健診では(多くの場合、検診でも)それらの将来的なリスクを確認することはできません。

※1 サルコペニア:筋肉量が減少し、身体機能が低下した状態。転倒や骨折、寝たきりの原因になる

※2 ロコモティブシンドローム:骨・関節・筋肉・神経などの障害により、身体能力が低下した状態

健診や検診を受診して健康状態を確認することはもちろん大切ですが、それ以上に大切なのは、将来も健康であり続けるために日頃から健康づくりを意識した生活を送ることです。健診の判定にB・C・Dがある人はもちろん、判定が全てAであっても、ぜひ次の「6つの健康習慣」を実践してください。

健康であり続けるための「6つの健康習慣」
  • 1.無煙
    他人のものも含め、たばこの煙を吸わない
  • 2.少食
    腹八分目を心がけ、食べ過ぎない
  • 3.少酒
    お酒は適量(ビールなら500ml缶1本)にし、飲み過ぎない
  • 4.多動
    座りっぱなしにしない。1日60分は体を動かす
  • 5.多休
    疲労をためない。適度な休憩、睡眠をとる
  • 6.多接
    会話を楽しむ、音楽を聴く、本を読むなど、創造的な生活を送る
和田 高士 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授

医学博士。1981年東京慈恵会医科大学卒業。1985年同大学内科系大学院修了。同大学第4内科講師、大学附属病院総合診療室診療医長を経て、2000年に東京慈恵会医科大学健康医学センター長、2008年に東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授に就任、2009年より現職。日本人間ドック学会理事、日本生活習慣病予防協会副理事長。著書『ちょっと心配な健康診断の数値がすぐにわかる本』(学研プラス)など。

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