健康マメ知識
2017.06.23

夏こそコワイ「冷え」体と心に起こる不調とは!

~夏冷え対策4つのポイント~
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プラナ / PIXTA(ピクスタ)

外は少し歩いただけでもぐったりするような厳しい暑さ。でも電車やオフィス、お店の中などに入ると冷房がガンガンに効いている――。そのような環境に身を置く夏は、自分でも気づかないうちに体が冷えてしまいがち。さらに冷たい飲みものの飲み過ぎなどで、体の中から冷えてしまうことも多くなります。

こうした冷えが、実は頭痛や不眠、むくみやめまいなどさまざまな体の不調を引き起こす要因になっているそうです。

このような“夏の冷え症”の予防と対策について、東洋医学を取り入れた診療を行う目黒西口クリニック院長の南雲久美子さんにお聞きしました。

「自分は冷え症ではない」と
思っている人ほど実は冷えている!?

冷え症は、大きく2つのタイプに分けられます。一つは、もともと虚弱体質で貧血や胃腸のトラブルなどを起こしやすい人に多い「古典的冷え症」。もう一つは、基礎体力があり、胃腸も丈夫で元気な人に多い「現代版冷え症」です。

夏に冷えが悪化しやすいのは、圧倒的に後者の「現代版冷え症」です。というのも、冷たいものをたくさん飲んでも胃腸を壊したりすることが滅多になく、また長時間冷房の効いた室内にいても「寒い」とまでは感じない場合が多いため、知らず知らずのうちに冷えが体に蓄積しやすい傾向にあるのです。

特に夏は、外で汗をかいた後に冷房の効いた室内に入ることが多くなります。すると汗が蒸発するときに熱が奪われる上、急激に冷気にさらされるため体温はガクンと下がります。自分では寒さを感じていなくても、実は体が冷えきっているケースは多いので注意が必要です。

肩凝り、頭痛、イライラ……
さまざまな不調の大本は「冷え」にあり

東洋医学では、冷えは「けつすい」のトラブルを引き起こすと考えます。

体に冷えが蓄積すると、元気や気力がなくなって「気」と呼ばれる生命のエネルギーが滞ってしまいます。のぼせや不眠をはじめ、イライラや気分の落ち込みなど精神的な不調にもつながります(「気」のトラブル)。

また、血流が悪くなるため、手足の冷えや肩凝りなどの症状が起きやすくなります。女性の場合はさらに、月経痛や不妊症、不正出血など婦人科系の不調の要因になることもあります(「血」のトラブル)。

さらに血流が悪くなると水分のアンバランスが起こり、リンパの流れも滞り、水分の代謝が低下します。すると体内の余分な水分が排出されず、めまいや頭痛、耳鳴りなどの原因になるほか、食欲不振や下痢などの消化器系のトラブルも起きやすくなります(「水」のトラブル)。

夏の冷えの問題点は、ひと夏を過ぎればリセットされるというわけではなく、冷えた状態がそのまま次の季節になっても積み重なっていくことにあります。「冷えの程度×冷えが蓄積した年数」によって将来の健康状態は変わってくるともいえるのです。

そこで重要なのが、体に冷えを蓄積させないようにしっかり対策を行うことです。次の4つのポイントをこの夏はぜひ実行してください。

夏の冷え症を防ぐ
4つのポイント

① 体の外から冷やさない

そもそも足元の体温は上半身に比べて6~10度低くなっています。さらに、冷房の冷気は上から下へと下りていきます。冷房の効いた室内で長時間過ごすと足先が冷えるのはこのためです。

特に女性は足の冷えに悩む方が多いので、できればオフィスでのデスクワークのときなどは5本指ソックスをストッキングの内側に履いておくと効果的である上、汗による蒸れなども防ぐことができます。
また、最近は男性でも足元が冷えている人が増えています。冷えがひどい場合は5本指ソックスにするとよいでしょう。
さらに、首の後ろやおなか回りも冷えやすい部分。女性はストールを羽織ったりカーディガンを着るなど対策を。月経前や月経中は薄地の腹巻きなどでおなかを温めるのもお勧めです。

② 体の中から冷やさない

熱中症対策のためにもこまめな水分補給は大切です。ただし、キンキンに冷やした飲みものではなく、常温または温かいものを摂取するようにしましょう。
紅茶やプーアール茶には、体を温める作用があります。甘酒や味噌汁なども冷え対策に有効です。

ビアガーデンで冷たいビールを楽しみたいという人も多いと思いますが、冷えから体を守るためには一気に流し込まないように注意しましょう。アルコールなら、常温で飲める赤ワインや日本酒がお勧めです。

③ 冷えた体を温める

夏の入浴はシャワーだけで済ませる、という人が多いかもしれませんが、冷房や冷たい飲みものなどで冷えた体を温めるためにも、ぜひ湯船に浸かることを日課にしましょう。

お湯の温度は、自分にとって快適な熱さでOK。湯船に浸かる時間も、自分が気持ちいい程度で十分です。

美容効果の高い入浴法として、38~40度のぬるめのお湯に20分程度浸かる半身浴などもありますが、30代以降になるとこの入浴法ではのぼせやめまいが起こる場合もあるので注意が必要です。自分の体に負担のない方法で、毎日体を温めることが大切です。

(C) ペイレスイメージズ

④ 冷えにくい体づくりを

血行や水分代謝を促進する下半身の筋肉を鍛えることで、体そのものを冷えにくい状態に近づけることも可能です。

具体的には、

  • 早足で歩く
  • 電車や信号を待っているときなどに、かかとを上げ下げする
  • エスカレーターではなく階段を使う

などの方法がお勧めです。

ジムなど冷房が効いた室内での運動はかえって体を冷やすこともあるので、夏はできるだけ屋外で体を動かす機会を設けましょう。

激しいスポーツをしなくとも、上に挙げたように日々の生活の中での工夫を毎日続けていくことで十分に冷え対策になります。

南雲 久美子 目黒西口クリニック院長

内科医。杏林大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学第二内科勤務などを経て、1996年に目黒西口クリニックを開院。東洋医学と西洋医学を融合した治療を行う。冷え症、自律神経失調症をライフワークとしている。著書に『冷え症・貧血・低血圧』(主婦の友社)など。

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