食で健康
2017.04.02

こんなにあった!コーヒーの健康効果

“恩恵を得られる飲み方”とは?
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「コーヒーを1日3~4杯飲む人は、まったく飲まない人に比べて心臓や脳血管、呼吸器の病気で死亡リスクが4割程度低い」。2015年5月、国立がん研究センターや東京大学などの研究チームがこのような研究結果を発表し、大きな話題を呼びました。
 さらに2016年11月には国立がん研究センターの研究チームが、「日本人でコーヒーを1日3杯以上飲む人は、脳腫瘍を発症するリスクが低い」という研究成果を発表。このほかにも、「がんや動脈硬化、認知症などの予防や、内臓脂肪を減らす作用など、さまざまな健康効果が、日本をはじめ世界各国の多くの研究によって明らかにされています」と、”コーヒー博士”として知られる東京薬科大学名誉教授の岡希太郎さんは話します。

コーヒーを飲む人は循環器疾患の発症リスクが低い

■コーヒーをほとんど飲まない場合を1としたときの死亡リスク グラフ:コーヒーを飲む頻度と心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患の関係

45~74歳の、がんや循環器疾患にかかったことのない日本人を対象とした多目的コホート研究による報告。
コーヒーを1日に1~2杯以上飲む人、1日3~4杯飲む人は、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて、循環器疾患の発症リスクが低いことが明らかになりました。(データ:国立がん研究センター がん予防・検診研究センター)

2大成分はカフェインとポリフェノール
抗酸化作用で血液サラサラ、内臓脂肪も減!

コーヒーに含まれる代表的な成分はカフェインとポリフェノール。カフェインにはすでに広く知られているとおり、中枢神経を刺激して眠気を覚ます覚醒作用があります。コーヒータイムに一息つくと疲れが緩和されたように感じるのも、カフェインによる作用のひとつです。

さらには思考力を高め、計算力や記憶力を向上させるといった効果もあるため、仕事の合間などに飲むのに最適といえます。

また、「体内の不要な水分や老廃物を排出する利尿作用や、細菌や外からの刺激などによって起こる病気の発症を抑える抑炎作用、脂肪分解酵素を活性化して血行を促進し代謝を上げる効果なども認められています」と岡さんは紹介します。

一方のポリフェノールは、老化や生活習慣病などの一因といわれる活性酸素を除去する抗酸化作用が高いのが特徴です。

ここでちょっと知っておきたいのが「抗酸化」の重要性。活性酸素とは本来、外部から侵入した細菌やウイルスなどから細胞を保護するために体内に存在します。しかし、紫外線やストレス、喫煙、食生活の乱れなどによってその量が増えすぎると、健康な細胞まで酸化させて老化を促進する要因に。また、血液中の悪玉コレステロール(LDL)を酸化させて動脈硬化を招くともいわれています。

つまり、血液をサラサラに保ち、いつまでも若々しく健やかな体を保つためには、活性酸素を増加させるような要因をできるだけ取り除くことと、ポリフェノールのような抗酸化成分を積極的に取って酸化を防ぐことが不可欠なのです。

こうした点においても、いつでも手軽に飲むことができて、そのうえポリフェノール豊富なコーヒーは健康の心強い味方ということができます。

ちなみにポリフェノールはほとんどの植物に存在していて、その種類は何千にも及ぶといわれています。コーヒーの生豆には、その一種である「クロロゲン酸」が特に多く含まれています。クロロゲン酸は抗酸化作用のほか、血糖値上昇抑制、血圧改善、内臓脂肪減少など多くの効果が確認されています。

さらに、コーヒー豆には焙煎(ばいせん)の方法によって変化する成分も含まれているそう。

生豆の成分がたくさん残っている浅煎りは、抗酸化作用があるクロロゲン酸が豊富に含まれていることから、老化を予防するといわれています。一方、深煎りの場合、ニコチン酸が血液をサラサラにしてくれるほか、NMP(N-メチルピリジニウムイオン)という焙煎したコーヒーだけに含まれている成分が、ストレスに負けて疲れ切った神経をリラックスさせてくれるのです。

コーヒーの優れたところは、こうしたさまざまな成分が複合的に働くところ。複数の相乗効果によって、体に良い影響を及ぼすと考えられています。

ベストは1日3杯
無理のない範囲で毎日摂取することが健康のカギ

とはいえ、たくさん飲めば飲むほど健康になれる、というわけではありません。冒頭に挙げた研究結果でも明らかにされているように、1日3~4杯程度飲むのであれば病気のリスクを下げることが期待できます。しかし5杯以上になると、インスリンの働きが鈍くなって糖尿病のリスクが高くなる、といった報告もあります。飲みすぎには注意が必要です。

お薦めする量は1日3杯。まずは朝、目覚めのコーヒーを1杯。2杯目は昼、ランチの後などに。そして3杯目は夜。眠りの妨げにならないよう、早めの時間帯に飲むようにするとよいでしょう。こういうタイミングでコーヒーを飲むことで、起きている間はずっとコーヒーの持つ有効成分が働き続けることになります。もし、そんなに飲めないという場合は、1日1杯でも毎日続けて飲むことが健康につながります。

なお、カフェインが体質に合わないと、コーヒーを飲むと頭痛が起きたり、具合が悪くなったりすることもあるため、そのような場合は決して無理に飲まないようにしてください。最近はカフェインを含まないデカフェの品質も向上してきているので、そういうタイプのコーヒーを取り入れるのもよいでしょう。

近年はインスタントコーヒーにも血流改善作用の高い5-HMF(5-ヒドロキシメチルフルフラール)という成分が豊富に含まれているという報告もありますが、コーヒーの有効成分を効率よく摂取するためには、濃いめに抽出したドリップがお薦めです。風味豊かでおいしいコーヒーを楽しみながら健康を保ちましょう。

岡 希太郎 東京薬科大学名誉教授
薬学博士(東京大学)

1941年東京都生まれ。日本コーヒー文化学会常任理事。臓器移植の薬理学、漢方の薬物動態、出生体重と成人病などについて研究。薬学のテクノロジーをコーヒー研究に活用し、その健康効果を追求。著書に『がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい』(集英社)、『珈琲一杯の元気』(医薬経済社)など多数。

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