知っておきたい病気・医療
2017.09.22

検診へ行こう!乳がんから自分を守る

~20歳以降は月1回のセルフチェック、30歳以降は年1回の定期検診を~
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日本人女性がかかるがんの第一位を占める乳がん。患者数は年々増加していますが、早期発見すれば治る可能性が極めて高いのが特徴です。そこで重要なのが、定期的な検診とセルフチェックです。平松レディースクリニックの平松秀子院長に、定期検診を受ける際のポイントやセルフチェックの方法についてお聞きしました。

乳がん罹患者は30代~高齢まで
全年代で増えている

女性の乳房は、乳汁(母乳)を作る乳腺と、そのまわりを支える脂肪組織などから成り立っています。乳腺には乳頭を中心にして放射状に伸びる「乳管」と、その先に房状につながる「小葉」とがあります。小葉は乳汁(母乳)を作り出し、乳管はその乳汁を乳頭まで送り届ける役割を担っています。

■乳房の構造

乳腺組織は、乳汁(母乳)をつくる小葉と乳汁を乳頭まで運ぶ乳管で構成され、それらを脂肪や間質が支えています。

乳がんは乳腺にできる悪性腫瘍です。そのほとんどが乳汁(母乳)を産生する乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。乳管がんに比べると割合は少ないですが、小葉から発生する小葉がんもあります。

乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっているといわれ、エストロゲンの分泌量が多い時期が長く続くほど、発症のリスクが高くなると考えられています。とくに、下記の項目に当てはまる場合は注意が必要です。

チェック 乳がん発症のリスクが高いタイプ
  • 初潮が早い(11歳以下)
  • 高齢初産
  • 出産経験がない
  • 閉経が遅い(55歳以上)
  • 閉経後の肥満
  • 祖母や母、姉妹など、家族の中に乳がんや卵巣がんにかかった人がいる

ただし、「上記の項目に当てはまらないから大丈夫」というわけでは決してありません。

20年以上前の日本では、40代~50代で乳がんを発症する女性が圧倒的に多い傾向にありましたが、最近では30代女性の患者数も急増しています。また、60代以降で発症する女性も多く、90代で乳がんが発見された例もあるなど、全年代を通して患者数が年々増加しています(国立がん研究センター)。
要因の一つとして欧米化した食生活やライフスタイルの変化などが挙げられますが、きちんと節制した生活をしていれば絶対に乳がんにならないというわけでもありません。日々の生活の中で確実に乳がんを予防できる方法はないのです。
だからこそ大切なのが、早期発見・早期治療です。しこりなどの自覚症状がなくても、検診で乳がんが見つかる場合もあるため、定期的に乳がん検診を受けることをおすすめします。

マンモグラフィと超音波検査、
両方の組み合わせが重要

乳がん検診は各市区町村でも行われていますが、対象年齢や受診間隔はさまざまです。40歳以上を対象とし、2年に1回のペースで検診を行う例が多くみられますが、先に述べたように乳がんは30代でも発症します。早期発見のためにも、30歳を過ぎたら毎年1回、検診を受けるようにしましょう。

乳がん検診は、主に「マンモグラフィ(乳房のX線検査)」と「超音波検査(エコー)」の2つの方法で行われます。どちらも乳がんの初期症状である小さなしこりや石灰化(カルシウムの沈着)などの有無を画像に映し出して調べるものですが、それぞれ以下のような特徴があります。

  • マンモグラフィ(乳房のX線検査)
    【メリット】
    石灰化が非常にわかりやすい
    【デメリット】
    乳腺組織の密度が濃い「高濃度乳房」の場合は、全体が白く映し出されてしまうため、小さなしこりを見つけるのが難しい
    (※高濃度乳房については、下のコラムもご参照ください)
  • 超音波検査(エコー)
    【メリット】
    高濃度乳房の場合でも、数㎜の小さなしこりまで見つけ出すことができる
    【デメリット】
    石灰化がはっきりとわかりにくい傾向にある

どちらか一方の検査だけでは、しこりや石灰化が映し出されない場合もあります。正確な診断のためにも、両方の検査を組み合わせて行うことが大切です。

乳がん検診を受ける
ベストタイミングや注意点は?

乳がん検診を受ける際には、次のことを心がけましょう。

  • 生理が終わった4~5日後に受ける
    マンモグラフィは乳房を圧迫板とフィルムの入った板ではさみ、薄く伸ばして撮影するので、生理前や生理中で乳房が張っていたりすると圧迫される際に痛みを感じることもあります。決して鋭い痛みではありませんが、痛みが苦手な人は生理が終わった4~5日後に受診するのがおすすめです。
  • 制汗剤やパウダーなどはつけない
    制汗剤やパウダーなどがついた状態でマンモグラフィ撮影を行うと、石灰化にとてもよく似た状態に映る場合があります。検診の前はこうしたものを脇の下や胸のまわりなどにつけないようにしましょう。
  • 妊娠中・妊娠の可能性がある場合は超音波検査のみに
    マンモグラフィは胎児へのⅩ線の影響が懸念されるので、妊娠中や妊娠の可能性があるときは超音波検査だけを行いましょう。なお、授乳中も超音波検査は引き続き受けることができます。

月に1回、乳房や脇の下を
セルフチェックする習慣を

乳がんは自分で発見できるがんです。毎年1回の乳がん検診に加え、毎月1回のセルフチェックをぜひ習慣にしましょう。

主な方法は以下のとおりです。

  • 鏡の前で乳房の形をチェック
    鏡の前に立ち、両腕を上げて、次の3つについて調べます。

    1)左右の乳房の形や大きさに差はないか
    2)乳房のどこかにえくぼのようなへこみやひきつれがないか
    3)乳首がへこんだり、ただれができていないか
  • 指の腹でしこりの有無をチェック
    手のひら全体で乳房をぎゅっとつかむのではなく、指の腹をそろえて乳房の上から下、内から外へとまんべんなくすべらせるようにしながら、しこりの有無を調べます。
    入浴中やお風呂上がりに石けんやボディローションなどをつけて行うなど、皮膚のすべりをよくした状態で行うのもよいでしょう。
    また、仰向けに寝て、あまり高さのない枕や折ったタオルなどを背中の下に入れ、片手を頭の下に入れた状態で指の腹をすべらせて調べる方法も有効です。姿勢を変えることで、よりしこりを見つけやすくなります。
  • 脇の下のリンパ節と乳頭をチェック
    体を起こした状態で、右手の指をそろえて伸ばし、左脇の下に入れて、しこりがないか指先で調べます。右の脇の下も同様に行いましょう。
    さらに、左右の乳首を軽くつまんで、血液の混じった分泌物が出ないかどうか調べます。

このようなセルフチェックで変化に気づいたり、何か少しでも気になることを感じた場合、今は体調がいいからと先伸ばしにせず、必ず乳腺外科など該当の診療科を受診することが重要です。なお病院によっては外科に設けられていることもあります。乳腺認定医・専門医がいるかどうかを確認しましょう。

平松 秀子 平松レディースクリニック 院長

1987年、東京女子医科大学卒業。93年、米国ハーバード大学留学。帰国後、慶應義塾大学医学部外科乳腺班のチームとともに、乳腺疾患の診療、研究に従事。2001年より同大学医学部非常勤講師として診療や学生の講義を担当。05年に現クリニックを開院。日本医学放射線学会専門医。日本乳癌学会乳腺専門医。マンモグラフィ検診精度管理中央委員会読影認定医。著書に『はじめての乳がん検診 40~60代は危険ゾーン! 受けよう、視触診、マンモ、超音波!!』(カドカワ・ミニッツブック)、『知っておきたい女性の病気 乳がんと子宮がん検診』(カドカワ・ミニッツブック)

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