健康ライフ
2020.02.14

「ゆるスクワット」で一生歩ける体づくりを

~無理なく気軽に続けて健康に~
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健康のためには定期的な運動習慣を持つことが大切ですが、時間がない、運動が苦手といった理由から実行に移せない人も少なくないでしょう。そこで注目したいのが、畳1畳分ほどのスペースと、5分あれば、いつでもどこでもすぐにでき、日常生活に取り入れやすい「ゆるスクワット」です。「ゆるスクワット」の健康効果や方法について、順天堂大学医学部の小林弘幸教授に伺いました。

筋力アップ&血流促進!
「スクワット」の効果とは?

スクワットとは、しゃがむ動作を繰り返す運動のことです。スクワットの主な効果は次のとおりです。

  • 筋力アップ
    しゃがむ時には股関節や膝関節、足関節など多くの関節が同時に動きます。それに伴い、太ももやお尻、ふくらはぎなどにある何種類もの筋肉が連動して使われます。全身の筋肉の約6割が下半身にあるため、スクワットを行うことで効率よく筋力をアップすることができます。
    下半身だけでなく腹部や背中、首、胸、足の裏や足の甲なども使うため、全身の筋肉を鍛えることにもつながります。
    また、一般的な筋トレでは鍛えにくい筋肉である「肛門括約筋こうもんかつやくきん」や、「骨盤底筋群こつばんていきんぐん」などにもアプローチでき、加齢による尿漏れなどの予防にも役立ちます。
  • 血流の促進
    下半身の筋肉には、重力で下がってきた血液を心臓に戻すポンプ機能が備わっています。スクワットでしゃがむ動作を繰り返すと、このポンプ機能の働きが活発になるため、血液の流れがスムーズになります。血流が良くなると、全身の細胞に酸素と栄養が行き渡るようになり、体調を良好な状態に保ちやすくなります。
  • 自律神経を整える
    血流が良くなることで、自律神経のバランスが整いやすくなるという効果も見られます。自律神経のバランスが整うと自然と気持ちが明るくなり、やる気が湧いてきたり、「もう少し体を動かしてみよう」という次の行動へのきっかけになるなど、ポジティブな連鎖が生まれます。

痛みなく、ゆっくり行うのが
「ゆるスクワット」のコツ

次の項目をチェックしてみましょう。

  • デスクワークなどで長時間座りっぱなしになることが多い
  • 運動はしたいが、ジムなどに通う時間や金銭的余裕がない
  • 運動不足という自覚がある
  • 出歩くことや階段の上り下りなどが、おっくうに感じることがある
  • 気分が落ち込んだり、やる気が起きないことがよくある

上記の項目に1つでも該当する人は、「ゆるスクワット」がお勧めです。ゆるスクワットとは文字どおり、無理なく楽にできる“ゆるい”スクワットのことです。

スクワットにはさまざまな種類があり、「ひざを90度くらいまで曲げてしゃがむ」「床と太ももが平行になるようにしゃがむ」、さらに難易度の高いものとして「完全にしゃがみこむ」といった方法があります。これらはいずれも普段からよく運動し、足腰を鍛えている人に適したものになります。
運動習慣があまりなく、足腰の筋力が弱くなっている人が、こうしたハードなスクワットを行うと、ひざや腰などを痛める原因になりやすいので注意が必要です。
そこでお勧めするのが、ゆるスクワットです。ゆるスクワットは、次の方法で行います。

  • ひざは無理なく、曲げられる角度まで曲げる
    痛みを感じるほど深く曲げることは避けましょう。
  • 意識を太ももに集中させる
    脳が意識した筋肉を動かすことで、筋力アップ効果が高まります。
  • ゆっくり行う
    腰を下ろすのに4秒、上げるのに4秒くらいかけて行いましょう。
  • 呼吸は自然に行う
    自分にとって無理のない呼吸法で行います。スクワット中に呼吸を止めないよう気を付けましょう。
  • 1度につき最大20回程度を目安に、毎日続ける
    回数を増やし過ぎると、ひざや腰を痛める要因となります。
    最初は無理のない回数から始め、慣れてきたら20回程度行いましょう。回数よりも毎日継続することがより大切です。
正しいフォーム 正しいフォーム

ひざや腰に痛みが生じないよう、しゃがむ角度は浅くても問題ありません。重要なのは、太ももの筋肉をしっかり意識しながらゆっくり行うことです。最初は、椅子の背などにつかまって、無理のないように行いましょう。

間違ったフォーム 間違ったフォーム

出かける前に行うと
健康効果もアップ!

ゆるスクワットは、畳1畳分程度のスペースさえあれば、いつでもどこでもできます。自宅でテレビを見ながら行ったり、仕事の合間に行ったりするのも良いでしょう。

日常生活に取り入れる際にお勧めなのが、出かける前のゆるスクワット習慣です。スクワットには血流を促進して自律神経のバランスを整え、気持ちを明るくポジティブにする効果があります。出かける前に行うと活力が湧き、行動力もアップしやすくなります。

また、ゆるスクワットで下半身の筋肉を刺激すると、一般的に歩くスピードが速くなる傾向にあります。多くの研究で、早く歩くことができる人は、健康寿命が長い傾向にあるということが分かっています。歩行速度を上げて老化予防につなげるという意味でも、外出前のゆるスクワットは効果的です。

また、入浴前に行うと、血流が良くなるため体が温まりやすくなります。その後の就寝もスムーズになるため、こちらもお勧めです。

逆に、体に負担をかけないため、食事のすぐ後や就寝前に行うのは避けましょう。

運動習慣がほとんどない、体を動かすのがあまり好きではないという人の中には、ゆるスクワットをおっくうに感じる人もいるかもしれませんが、下半身の筋力が弱いまま年齢を重ねていくと、自力で歩けなくなるなど、将来的に健康リスクを抱える可能性があります。
ゆるスクワットはあくまでも自分にとって無理のない範囲で行うことができる「気軽で、辛くないスクワット」です。
いつまでも元気にイキイキ過ごすためにも、ゆるスクワットを日常生活に取り入れましょう。

小林 弘幸 順天堂大学医学部教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 総合診療科・病院管理学教授

日本体育協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。また、日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても知られる。『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』『死ぬまで“自分”であり続けるための「未来日記」』(ともに幻冬舎)など著書多数。

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