知っておきたい病気・医療
2020.01.10

ドライアイ?それとも花粉症? 

自分の症状を理解して、正しい対処を
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空気が乾燥する冬から春先にかけて、目がかゆい、ショボショボするなどの症状があり、「もしかして花粉症?」と心配になる人もいるのではないでしょうか。実は、花粉症で目に現れる症状とドライアイの症状は、ほぼ同じです。また、両方が原因となっている場合もあり、症状だけで判断するのは難しいものです。ドライアイと花粉症の症状や対処法について、みさき眼科クリニック院長の石岡みさき先生に伺いました。

ドライアイと
花粉症の違い

ドライアイとは、涙の分泌量が減ったり、量は十分でも涙の質が低下したりすることにより、目の表面を潤す力が不足した状態です。現在の診断基準では、涙の量や角膜表面の傷の有無にかかわらず、「5秒以上目を開けていられない」かつ「自覚症状がある」場合にドライアイと診断されます。

涙は通常、水の層、油の層、ムチンという成分の層で構成され、一定の厚みで均一に目の表面を覆って安定した状態を保っています。しかし、涙が分泌されていても目の表面に安定してとどまることができず、5秒以内に目が乾いてしまう「BUT 短縮型ドライアイ」(※)が最近増えています。これは、パソコンやスマートフォンなどの長時間の使用やエアコンによる乾燥、コンタクトレンズの使用などの影響があります。

また、空気が乾燥する秋の終わりごろから真冬にかけて、ドライアイの症状が悪化する傾向が見られ、男性よりも女性の方が、ホルモンの影響などによりドライアイになりやすいことが分かっています。

花粉症による目の症状は、「アレルギー性結膜炎」と言われ、花粉などに反応して結膜に炎症が起きます。最も多いのは春のスギ花粉症で、地域により異なりますが、スギ花粉が飛散する2月中旬ごろから4月上旬にかけて、毎年症状に悩まされる人が多くなります。

※ BUT 短縮型ドライアイ:BUTは、Breakup timeの略。涙の安定性の指標である涙液層の破壊時間が短いタイプのドライアイ

ドライアイと花粉症が
同時に起きていることも

「目がかゆい」などの花粉症の症状は、ドライアイでもほぼ同じ症状が見られます。

ドライアイと花粉症の、どちらか片方だけという人もいますが、もともとアレルギー体質の人は涙の状態が不安定になりやすく、ドライアイの症状が出やすいということが分かっています。ドライアイと花粉症が併発していることも珍しくなく、中にはウイルス性結膜炎や老眼など別の要因が絡んでいることもあります。ドライアイ、花粉症などそれぞれに合った対処をしなければ、症状は改善しません。症状だけで、原因を判断するのは難しいため、早めに眼科専門医に相談することをお勧めします。

■ドライアイと花粉症に共通する症状
  • 目が乾く
  • 目が疲れる
  • 目がゴロゴロする
  • 目がかすむ
  • 目がかゆい
  • 目が赤くなる
  • 目が痛い
  • 目が重たい
  • 目に不快感がある
  • 涙が出る
  • 光がまぶしい
  • 目やにが出る

涙の表面に凸凹ができる
ドライアイの診断・治療

眼科では、ドライアイの診断の際、蛍光色素で涙を染め(生体染色)、目の表面の傷や涙の状態をチェックします。ドライアイの場合、角膜の上に「ドライスポット」と呼ばれる乾いた部分が見られ、本来均一な涙の表面に凸凹ができて、不安定な状態になっています。
市販薬には、保湿成分のヒアルロン酸がごく薄い濃度しか含まれていません。目の表面の水分やムチンという粘液を増やすムコスタ(一般名レバミピド)、ジクアス(一般名ジクアホソルナトリウム)という効果的な処方薬(点眼薬)がありますので、眼科で治療する方が早く解決に繋がります。

花粉症には
抗ヒスタミン薬が基本

花粉症は、生体染色の所見と症状、時期などから診断できることも多いですが、今までアレルギーの症状がなかった人などは、細い試験紙に涙を吸わせ、薬液で反応を見る「アレルウォッチ」という検査で確かめる方法もあります(医療機関によって検査方法は異なります)。
花粉症に対する処方薬は、抗ヒスタミン作用のあるパタノール(一般名オロパタジン塩酸塩)、アレジオン(一般名エピナスチン塩酸塩)の点眼薬が主流です。1日2回の点眼で済むアレジオン点眼薬も使用されるようになり、治療がしやすくなりました。重症の場合はステロイドの点眼薬が使われることもありますが、副作用として眼圧が上がることもあるため、眼科で眼圧をチェックしながら慎重に使うことが必要です。

花粉症は
初期療法が大切

花粉症は、目や鼻の症状などによって、使用する薬の種類も異なり、薬の効き方も人によってさまざまです。花粉が飛び始める前か、症状が少しでも現れた時点から「初期療法」を始めると、症状が出る期間を短くしたり、症状を軽くしたりする効果があると言われています。実際、自分に合う薬をシーズン初期から使って、乗り切っている人もいます。
また、マスクやメガネなどで花粉を体内に侵入させないようにすることも必要ですが、目についた花粉を洗い流す目的でドライアイ用の市販の人工涙液や点眼型洗眼薬を使うということもできます。

ドライアイも花粉症も、慢性的に悩まされている人が多い身近な目の症状ですが、自分に合った対処法で賢く乗り切りましょう。

石岡みさき先生 みさき眼科クリニック院長

1989年、横浜市立大学医学部卒業。93年から米ハーバード大学スケペンス眼研究所に留学。帰国後、東京歯科大学市川総合病院眼科を経て、98年に両国眼科クリニック院長に就任。2008年から現職。横浜市立大学医学部眼科講師。専門はドライアイ、目のアレルギー。著書に『点眼薬の選び方』(日本医事新報社)など。

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