健康マメ知識
2021.04.16

トクホと機能性表示食品の違いとは?

~健康をサポートする保健機能食品を賢く選ぼう~
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特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品、機能性表示食品、さらにいわゆる「健康食品」と呼ばれる食品は数多くありますが、これらにはどのような違いがあるのでしょうか。消費者庁によって機能性を表示することが認められている「保健機能食品」(トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品の総称)を理解すると、食品選びの参考になります。これら保健機能食品の特徴や見分け方、摂取の方法などについて、(公財)日本健康・栄養食品協会 機能性食品部長の菊地範昭さんに伺いました。

特定保健用食品(トクホ)とは?

「健康に良さそう」「特定の目的に応じた栄養補給が手軽にできる」といったイメージがある健康食品ですが、法律上、健康食品についての定義はなく、消費者庁では「健康に良いことをうたった食品全般」のことを健康食品としています。一方、機能性などを表示できる食品を総称して「保健機能食品」と呼びます。最初にできたのは1991年に認められた「特定保健用食品(通称「トクホ」)」です。

トクホは、食品の持つ特定の保健の用途を表示して販売される食品です。有効性・安全性について消費者庁が個別に審査、消費者庁長官が許可した食品がトクホと認められ、特定保健用食品のマークと特定の働きについての表示が可能になります。2020年12月までに許可されているトクホは約1,000品目、用途は「おなかの調子を整える」「骨の健康に役立つ」「肌の水分を逃しにくくする」など12種類です。2020年には、特定保健用食品公正取引協議会が発足し、血圧や体脂肪などのカテゴリーを記載できる「トクホの公正マーク」が新設され、より分かりやすい表示にしようという動きもあります。

■トクホの公正マーク トクホの公正マーク

トクホ公正マークと組み合わせて、カテゴリーを記載したパターンも使用可能

トクホ公正マークとカテゴリーを記載したパターン

栄養機能食品とは?

2001年からは、「栄養機能食品」が保健機能食品として認められるようになりました。栄養機能食品とは、人の生命・健康維持に必要な特定の栄養素の補給のために利用されることを目的とした食品です。既に、科学的根拠が十分に確認され、規格基準が定められているビタミンやミネラルなどの特定の栄養成分について、定められた範囲内であれば、許可や届出がなくとも栄養機能を表示することができます。また、栄養素の名称と機能だけでなく、「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省2020年版)に基づいた一日の摂取目安量など、消費者庁が定めた表現によって機能を表示することが決められています。例えば、ピーマンに「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに、抗酸化作用を持つ栄養素です」といった機能の説明を記載できます。

機能性表示食品とは?

2015年には、機能性を分かりやすく表示した食品の選択肢を増やすことを目的に「機能性表示食品」が新たに保健機能食品に加わりました。これは個別の審査や許可を受けたものではなく、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた安全性や機能性の情報を販売日の60日前までに消費者庁に届け出た食品です。届出情報については、消費者庁のウェブサイトで公開されます。有効性の担保は、最終製品によるヒト試験または研究レビュー(文献調査によるまとめ)であり、安全性については試験または成分に関する文献調査や過去の実績(食経験)によって証明します。
申請から許可までに4〜5年かかることが多いトクホに比べて、機能性表示食品は多くの場合、1年以内に届出が受理されます。届出と製造・管理体制を整えれば、健康への働きを食品に表示できることから、届出食品数は年々増加しており、約3,800品以上になっています(2021年3月25日現在)。また、機能性表示食品は種類も多様で、生鮮食品も対象となります。例えば、バナナやトマト、ミカンなどの野菜・果物類、ブリなどの魚介類にも、機能性がうたわれている食品があります。用途は整腸やコレステロール、血糖値の調節など、トクホと共通するものが多いです。健康な人が対象であれば、認知機能、疲労、精神的ストレス、免疫、また目や関節といった部位など、より幅広い機能の表示が可能です。

■保健機能食品の比較 保健機能食品の比較

食品と医薬品の区分は明確に異なる

3つの保健機能食品やその他健康食品は、いずれも「食品」であり、予防や治療を目的とした効果や安全性が認められている「医薬品」とは異なります。厚生労働省が定める「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に掲載されている成分を1種類でも使用したものは医薬品に分類されます。
したがって、保健機能食品は、いずれも治療効果や予防効果を示すような内容や特定の疾患の方を対象とした表示はできません。また、診断、治療、処置など医学的な表現や、肉体改造、増毛、美白など意図的な健康の増強を明示するような表現も認められていません。あくまでも健康な人に役立つことや限定的な働きが表示されるものであり、医薬品のような作用が期待できるものではないことを理解しておきましょう。もちろん、たくさん食べればより多くの効果につながるわけではありません。

■保健機能食品の位置づけ 保健機能食品の位置づけ 出所:健康食品Q&A(消費者庁2019)

パッケージ表示の見方

食品を選ぶ際は、パッケージの表示をよく見て選びましょう。図のように、トクホはパッケージに許可表示、栄養成分量および熱量、摂取目安量、摂取方法などの表示が義務づけられています。機能性表示食品の場合は、届出番号が表示されます。
「トクホ、機能性表示食品だから安心」と思い込まずに、疑問点がある時は、認可表示や届出番号をもとに、消費者庁のウェブサイトで公開されている詳細な情報を確認したり、掲載されている連絡先に問い合わせてみたりすることも大切です。品質については、(公財)日本健康・栄養食品協会が認定しているGMP(適正製造基準)製品マーク、JHFA(認定健康食品)マークが付いていることも商品選びの目安になるでしょう。

■トクホのパッケージ表示例 トクホのパッケージ表示例
■GMP(適正製造基準)製品マーク

原材料および資材の受入から製品の出荷までの全工程が認証基準に適合と認定された工場で製造され、個別の審査に合格した製品に表示が許可されるマーク

GMP(適正製造基準)製品マーク
■JHFA(認定健康食品)マーク

健康食品の品質についてJHFA(認定健康食品)制度の規格基準に基づいて、審査に合格した製品に表示が許可されるマーク

JHFA(認定健康食品)マーク

バランスの良い食生活を基本に
摂取量を守って利用する

トクホにも機能性表示食品にも「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という文言の表示が義務づけられています。保健機能食品に頼るのではなく、まずは食生活を振り返り、主食・主菜・副菜を基本に食事バランスを見直すことが大切です。そのうえで、摂取量の目安や摂取方法をしっかり守って、保健機能食品を上手に活用するのが賢い利用法です。
こうした食品も過剰に摂りすぎれば健康に害を及ぼすこともありますし、医薬品を服用している場合は相互作用で薬の効果が弱くなったり、強くなりすぎたりする可能性もあります。生活習慣病などで薬を服用している人は、かかりつけ医に相談してから利用すると良いでしょう。また、こうした食品の有効性を示す根拠となる研究は12週間の摂取期間を基準に設定されているものが多いことからも分かるように、効果はすぐに表れるものではありません。医師が認める商品を食生活改善のきっかけとして取り入れ、数か月続けてみて効果を実感できるものを選ぶのが良いでしょう。
ライフスタイルに合わせて自分にとって良いものを冷静に見極め、これらの食品を上手に健康に役立てましょう。

菊地 範昭 公益財団法人日本健康・栄養食品協会 機能性食品部長
一般社団法人健康食品産業協議会 理事

1985年大塚製薬株式会社に入社。機能性食品の研究に従事。さらに、新薬開発部で抗潰瘍薬、抗血小板薬、抗精神薬などの開発に携わる。その後、栄養製品食品領域に戻り、研究所長、開発部長として新製品や機能性表示食品などの開発業務を経て、2017年から日本健康・栄養食品協会に出向。現在に至る。

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