健康マメ知識
2020.01.24

“笑う門には福来る”楽しく笑って健康に!

「笑い」がもたらす効果とは?
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最新の医学研究において、笑いの健康効果が明らかになっています。笑いによって免疫力が上がる、痛みやストレスを感じにくくなる、といった研究報告が相次ぐようになりました。笑いがもたらす健康効果や、日常生活での笑いの取り入れ方について、東京家政大学家政学部栄養学科の大西淳之教授に伺いました。

笑いがもたらす
リラクゼーション効果

笑い方の種類はさまざまですが、健康のためには声を出して、お腹の底から笑うことが効果的です。

笑いには、心身をリラックスさせる効果があると言われています。声を出して笑う時には息を吐きますが、これは、近年注目されている瞑想めいそうやマインドフルネスに通じるものがあります。それらのメソッドで広く取り入れられている、鼻からゆっくり息を吸い、口からゆっくり長く息を吐く呼吸法には、自律神経の副交感神経を優位にして、心身の緊張状態を解きほぐす効果があることが分かっています。

このことから、笑いによって息を吐くことでも同じような効果が得られます。実際、大笑いした後にリラックスした気分を感じたり、気持ちが軽くなったりすることは多く、ストレスによって、心も体も常に緊張しやすい状態にある現代社会では、思いきり声を出して笑う機会を意識的に持つことが大切です。

笑いによって
血糖値の上昇を抑える

ストレスが心や体にさまざまな影響をおよぼすことはよく知られていますが、その一つに血糖値の上昇があります。ストレスを感じると交感神経が優位になり、血糖値を上昇させるホルモンの分泌が促進されます。

笑いと血糖値の関係性について調べるため、2003年に中高年の糖尿病患者19人を対象とした、興味深い実験が行われました。500kcalの食事を摂取した後、1日目は糖尿病についての単調な講義を受け、2日目は吉本興業の芸人による漫才を観賞して大笑いしました。両日とも、食後2時間後に採血をして、血糖値の上昇を調べたところ、1日目の食後血糖値は平均で123mg/dL上昇したのに対し、漫才を観賞した2日目は77mg/dLの上昇となり、笑うことで血糖値の上昇を抑えることが明らかになりました。

■笑いによる血糖値抑制の効果 笑いによる血糖値抑制の効果 出典:Diabetes Care.2003;26:1651-1652. Personalized Medicine Universe.2012;1: 2-6

笑いで免疫力アップ!!

大笑いした後の血液中の白血球を遺伝子レベルで調べたところ、次のような傾向が見られました。

  • 感染予防やナチュラルキラー(NK)細胞※の活性化などに関わるたんぱく質の合成が高まる。
  • 糖尿病や抑うつ、炎症反応に関わるたんぱく質の合成が低下する。

このことから、楽しく笑うことで健康にとって良いたんぱく質の合成がしやすくなり、免疫力の向上に繋がることが分かります。

※がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけて攻撃するリンパ球

NK細胞には体内に入ってきた病原体や異物を攻撃し、がん細胞を発見すると標的にして死滅させる働きがあります。この働きが高すぎると正常な細胞まで攻撃するようになり、自己免疫疾患などの要因になる場合がありますが、笑うことによってNK細胞の働きが、適正な状態になることも、研究で分かっています。

笑顔を作って
気持ちも明るく!

笑いにはさまざまな効果があることが分かっていても、仕事などで忙しく、ストレスの多い毎日を送っていると、なかなか笑うことができない日もあるかもしれません。

そのような時は、「ペン・テクニック」という方法で、表情だけでも笑顔にしてみましょう。

■ペン・テクニックで笑顔に! ペン・テクニックで笑顔に!

割り箸などを横にして、唇に当たらないように歯だけでくわえる。

ペン・テクニックを行うと、口角を上げる大頬骨筋だいきょうこつきんや目のまわりの眼輪筋がんりんきんなどの表情筋が動きます。

どちらも楽しさを感じて笑う時に同時に動く筋肉なので、この表情を作ることで脳は笑っていると錯覚します。その結果、自然と気分もリラックスした状態になります。

気持ちがふさいでいる時、無理にポジティブな方向に切り替えようとするのは、決して簡単なことではありません。そんな時は、このようにすぐできる方法で、まず顔の表情から少しずつ変えていくのがお勧めです。

どんなことを楽しいと感じるか、どんな時に大声で笑いたくなるかといった“笑いのツボ”は人それぞれ異なり、心身の反応にも個人差がありますが、楽しい笑いは、健康を保つためのベースになってくれるものです。自分自身も周りの人もハッピーになるよう、笑いを心掛けましょう。

大西 淳之 東京家政大学家政学部栄養学科教授

筑波大学大学院博士課程生物工学学際カリキュラム修了。博士(学術)。専門は生化学、精神栄養学。米国立衛生研究所(NIH)留学、北海道大学大学院理学研究科助教、東京医科歯科大学難治疾患研究所准教授、公益財団法人国際科学振興財団主任研究員を経て、2010年から現職。笑いや瞑想、また「食」がもたらす 心と体の相互作用について研究を行う。

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