知っておきたい病気・医療
2019.11.08

その症状は風邪?インフルエンザ?

~この季節に気を付けたい不調の見分け方~
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風邪やインフルエンザが流行し始めるシーズン。体調を崩しても、「ただの風邪」と思って過ごしていたら、実はインフルエンザだったというケースは少なくないものです。インフルエンザは、肺炎などの合併症を引き起こす可能性があるので、早く気付き対処することが大切です。そこで風邪とインフルエンザの違いや発症後の対応、予防などについて、秋津医院の秋津壽男院長に伺いました。

急激な高熱は
インフルエンザのサイン

風邪とは、鼻やのど(特に上気道じょうきどう)に生じる急性の炎症のことで、医学的には「風邪症候群」と言います。

ロタウイルス、アデノウイルスなどさまざまな種類のウイルスが原因となり、初期症状はのどの痛みやくしゃみ、鼻づまり、鼻水などが中心で、次第に発熱や頭痛、全身のだるさなどを伴うこともあります。気管や気管支などの下気道かきどうまで炎症が及ぶと、せきたんなども生じるようになります。

風邪は、若い人や体力がある人の場合、症状に合った薬を服用して炎症を和らげることで1週間程度で治ります。もし、1週間以上経っても咳が続くなど症状が改善しない場合は、肺炎や結核、肺がんなど別の病気の可能性があるので、医療機関を受診する必要があります。

一方、インフルエンザはインフルエンザウイルスという単一のウイルスが原因です。鼻やのどを中心に徐々に症状が悪化する風邪とは異なり、急激に重い全身症状が表れるのが特徴です。

典型的な症状として挙げられるのは、38度以上の高熱です。突然こうした高熱が出た場合には、インフルエンザである可能性が高いです。また、高熱に伴い、悪寒や震え、頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が強く表れることが多くあります。

インフルエンザかもしれないと思ったら、すぐに医師の診察を受けましょう。ウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザウイルス薬を服用し、感染を周囲に拡散させないよう、自宅療養が必要です。

■風邪とインフルエンザの主な特徴  風邪とインフルエンザの主な特徴

インフルエンザは型により
熱が上がらないことも

インフルエンザにはそれぞれ型があり、「A型」「B型」「C型」に分類され、症状が異なります。その中で大きな流行の原因になっているのが、A型とB型です。

■主なインフルエンザの型と症状の違い  主なインフルエンザの型と症状の違い

急激に高熱が出るのがインフルエンザの特徴ですが、免疫力が低下した高齢者や何らかの持病がある人などは熱が出にくい傾向があります。そのため、風邪だと思って放置しているうちに症状が悪化し、肺炎などの合併症を引き起こす可能性も高まります。症状が表れたら、まずは医療機関を受診することをお勧めします。

インフルエンザの検査は、「迅速診断キット」を用いて行うのが一般的です。のどや鼻の奥を綿棒のようなものでこすって組織を採取し、インフルエンザウイルスに感染しているかどうかを調べます。検査時間は15分程度で、結果もすぐに分かります。

インフルエンザの感染をはっきり判定できるのは、発症後12時間以上経過してからとされています。急な発熱や筋肉痛、関節痛など、先に挙げたようなインフルエンザの症状が表れたら、すぐに医療機関を受診すると良いでしょう。

また、抗インフルエンザウイルス薬は、発症後48時間以内に使用しないと効果が得られないとされていますので、発症後できるだけ早く受診することが大切です。

ワクチン接種や
免疫力アップで予防を!

風邪とインフルエンザの違いとして、ワクチンで予防できるかどうかということが挙げられます。インフルエンザは、インフルエンザウイルスに対するインフルエンザワクチンを接種することで予防することが可能です。

インフルエンザのワクチンは、毎年夏に発表されるインフルエンザ株から作られます。インフルエンザ株は、原則として世界保健機関(WHO)が推奨する株の中から、期待される有効性およびワクチンの供給可能量を踏まえた上で、双方を考慮した有益性(4種類の製造株に係る有益性の総和)が最大となるよう検討されて、決定しています。

ワクチンの接種により100%インフルエンザを発症しないわけではありませんが、発症後の重症化を防ぐなど、リスクを下げることができます。

一方、風邪の原因となるウイルスは100種類以上あると言われ、どのタイプのウイルスに感染するということが特定できないため、ワクチンで予防することは困難です。

そこで大切になるのが、体の免疫力そのものを高めることです。特に重要なのが、体の免疫の大きな要となる「腸」です。腸内環境が整うことで「腸管免疫」という免疫システムが正常に機能し、ウイルスや病原菌から体を守る力が高まります。

腸内環境を整えるためには、腸の善玉菌を増やす乳酸菌やビフィズス菌を積極的にとるのがお勧めです。手軽にとれるヨーグルトなどを毎日の食生活に取り入れると良いでしょう。1つの種類のヨーグルトを1週間程度食べ続け、お通じの状態が良くなるものが体に合っていると言えます。

さらに過度の飲酒や喫煙を控える、十分な睡眠をとる、ストレスを溜め込まないといったことも、免疫力を低下させないために大切です。

なお、風邪は症状が本格化する数日前から「なんとなくのどが痛い」「くしゃみの回数がいつもより多い」などちょっとした不調が表れていることが多いものです。この段階で放置せずに、しっかり休養を取り、早めに医療機関を受診することが悪化を防ぐポイントです。

こまめな手洗いと水分補給で
ウイルスの侵入を防ごう

風邪やインフルエンザは、ウイルスが付いた手で顔を無意識に触ることで体内に侵入しやすくなると考えられています。そこで重要なのがこまめな手洗いです。効果的な手洗いのポイントは、次のとおりです。

  • 1.せっけんをしっかり泡立てて手のすみずみまでなじませる
    皮脂を浮かせることで、指の隙間に入り込んだウイルスなども落ちやすくなります。
  • 2.流水で丁寧に洗い流す
    十分にすすぐことで、ウイルスも流れ落ちていきます。
  • 3.使い捨てのペーパータオルやティッシュで拭き取る
    ハンカチやタオルなどは、何度も使用するためウイルスが付着している可能性があります。また、公共のトイレなどに設置されているジェット式の乾燥機は、手に付いたウイルスが散る可能性があります。

 また、のどに付いたウイルスは10分くらいで体内に侵入します。この予防にお勧めなのが「水分補給」です。お茶や水などを少量ずつこまめに飲むことでウイルスを洗い流せるほか、のどが潤うことでウイルスの付着を防ぐこともできます。仕事中もデスクにペットボトルなどを常備し、こまめに水分補給をするなど、日ごろからできる予防を心掛けましょう。

秋津 壽男 秋津医院 院長

1977年大阪大学工学部卒業。会社勤務を経て86年和歌山県立医科大学卒業。同大学附属病院循環器内科に入局。88年から現職。日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本医師会公認スポーツドクター、日本体育協会公認スポーツドクター、日本禁煙学会認定禁煙専門医。『本当に怖いのは、第三の脂肪』(幻冬舎)など著書多数。

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