体内の水分量が減り、尿量が減る夏の暑い時期は、膀胱炎の発症率が高まります。
膀胱炎を治療せずに放置すると、腎臓まで症状が及び、
膀胱炎の発症リスクや症状、予防方法について、医療法人 薬院ひ尿器科医院に従事している村上知彦先生に伺いました。
脱水状態は膀胱炎のリスクが増加!
膀胱炎は、膀胱の中に細菌が侵入してたまり、炎症が起こる病気です。特に暑い夏は汗で体内の水分が減りやすく、膀胱炎になる可能性が高くなる季節です。
通常は膀胱に細菌が入っても尿を排出することで一緒に流れていきますが、汗をかいて体内の水分が減った状態になると、排出できる尿量が減り、膀胱内に細菌がたまりやすくなります。
膀胱炎は水分不足やトイレに行く回数が少ないなど、普段の生活スタイルの影響で発症することが多く、原因となっている生活習慣を改善しないと再発を繰り返すことも多いです。
症状を放置して悪化させると、高熱や強い腰痛などがでる腎盂腎炎を発症する危険性があります。そのため、膀胱炎になったら必ず治療を受けること、そして生活習慣を改善して再発を防ぐことが大切です。
膀胱炎の種類と症状
膀胱炎の種類は以下の4つにわかれます。
- □単純性膀胱炎
- □複雑性膀胱炎
- □間質性膀胱炎
- □出血性膀胱炎
それぞれの膀胱炎が起こる原因や症状の特徴は以下のとおりです。
単純性膀胱炎は急性膀胱炎ともいい、肛門や膣などの細菌が尿道を介して膀胱に入り、炎症を起こします。水分不足やデリケートゾーンの不適切なケアなどが原因で起こることが多く、基礎疾患がない方でも発症します。
単純性膀胱炎の主な症状はトイレが近くなる(頻尿)、排尿の終わりで下腹部が痛くなる(排尿終末期痛)、排尿の後に尿が残っている感じ(残尿感)などがあります。
尿道に関する病気や尿道カテーテル(管)の長期間の挿入などが原因で、尿の流れが悪くなることで起こる膀胱の炎症を、複雑性膀胱炎といいます。
複雑性膀胱炎の原因となる主な病気は、前立性肥大症や膀胱結石、神経因性膀胱、前立腺がん、膀胱がん、尿路の先天性異常(子どもの場合)などです。
複雑性膀胱炎は自覚症状が少なく、尿検査で膿や細菌が混じった尿が検出されて発覚することが多いです。
間質性膀胱炎は、非細菌性で原因不明の膀胱炎です。40~50代以降の女性に多く、膀胱の粘膜にハンナ病変という異常がみられるのが特徴です。
間質性膀胱炎は、症状が強くなると膀胱や下腹部に強い痛みが生じ、1時間に何度もトイレに行くほどの頻尿になります。
出血性膀胱炎は、ウイルスや細菌、薬剤(抗がん剤や免疫抑制剤、抗アレルギー薬、抗生物質、漢方薬など)、放射線などによって起こり、出血を伴う膀胱炎です。
出血性膀胱炎の主な症状は頻尿や排尿終末期痛、残尿感のほか、赤みをおびた尿(血尿)が見られ、重症例では血の塊がでることもあります。
膀胱炎を繰り返さないために
単純性膀胱炎は抗生剤を数日服用すると治りますが、その後は再発させないために生活習慣を改めることが必要です。予防にもつながるため、以下のポイントを心がけましょう。
- □こまめな水分補給
膀胱内の細菌を尿で排出するために、こまめに水分補給をして排尿量を増やすことが大切です。体内の水分量が少ないと膀胱内に細菌がたまって、膀胱炎になるリスクが高まります。1日1,500mlを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。 - □トイレを我慢しない
膀胱内に細菌をためないために、トイレを我慢するのは控えましょう。水分を飲んで尿量が増えても、外に排出しなければ予防効果はありません。
成人の尿量は1日で1.0〜1.5L、1回の排尿量は150〜200mlだと言われているため、正常であれば1日に4〜6回の排尿が必要になります。適宜水を飲みながら、排尿の間隔が空きすぎないようトイレに行く習慣をつけましょう。 - □陰部を清潔にする
尿道から膀胱へ細菌が入ることを防ぐために、入浴やシャワーは大切です。陰部を清潔に保つことで尿道に近づく細菌の数を減らせます。ナプキンや尿もれパッドなどを長時間替えずに使用することも、陰部が不衛生になり細菌が増えるため控えましょう。
また、排便をした後は、トイレットペーパーで陰部を前から後ろにふくことで、大腸菌などの細菌が尿道に入るのを防ぐことができます。 - □免疫を落とさない
過労やストレス、睡眠不足などで全身の免疫が落ちると、膀胱炎を発症しやすくなります。
規則正しい食生活を送り十分な睡眠をとることを心がけ、エアコンで身体を冷やしすぎるのも免疫の維持には良くありませんので、気を付けましょう。
特に脱水になりやすい夏の時期は、排尿量が減り膀胱にたまった細菌が流されないため、膀胱炎を発症する可能性が高くなります。上記の予防のポイントや規則正しい生活を心がけて、暑い夏でも膀胱炎に悩まされない日々を送りましょう。
長崎大学医学部医学科 卒業。九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て、現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院に勤務。
地域の泌尿器科診療に従事し、尿路感染症や尿路結石症、排尿障害、男性更年期障害といった良性疾患から、腎がん、前立腺癌、尿路上皮がんといった泌尿器科悪性疾患まで、幅広く対応している。